なぜ磁気嵐が起こるのか? 解説:リングカレント

文責: 海老原祐輔 
(京都大学生存圏研究所)


公開日:2006年10月1日(第一版PDF版
2014年9月1日(第一版ウェブ版)

 

もくじ

はじめに

空間構造と組成

供給過程

輸送過程

消失過程

他領域との結合

リングカレントに対する誤解

まとめ

はじめに

地球磁場が数日間減少することがある.これを磁気嵐を呼び,地球を取り囲むように流れるリングカレントがその原因である.リングカレントの発達と消失は磁気嵐の象徴であり,リングカレントを理解することは磁気嵐を理解することとほぼ等価である.20世紀初頭にはリングカレントの存在が予言されていたが,その実体については長らく不明であった.1958年に相対論的な速さを持つ高エネルギー粒子が多く集まった放射線帯(ヴァン・アレン帯)が発見されると,Akasofu[1961]は放射線帯粒子が作る磁場変動を精密に計算した.仮定した粒子のエネルギー密度が低かったため磁気嵐ときに観測されるような大きな磁場変動を再現することはできなかったが,内部磁気圏磁場や放射線帯変動を理解するための重要なアプローチとして引き継がれていく.磁気嵐時のリングカレントの実体が分かったのは,放射線帯の発見から9年後のことである.Frank [1967]は磁気嵐時に100 eV〜数MeVのイオンが大幅に増加し,地球磁場の減少を説明できることを示した.その後,リングカレントは2-6 Re(地球半径の2から6倍)の内部磁気圏と呼ばれる宇宙空間中を流れていることや,主にイオンが電流をになっている事などが分かってきた.

リングカレントは地球をとりまく巨大な電流であるが、導体中を電流が流れているわけではない.リングカレントを担うのは,地球磁場に捕捉され宇宙空間中を運動している荷電粒子である. リングカレントは荷電粒子の集合であるから、リングカレントの消長を理解するためには荷電粒子の輸送,供給,消失過程を理解する必要がある.磁場と電場を与えれば一意にリングカレントが決まるわけではなく,増大したリングカレントは自分自身の状態を変えるという非線形効果があるため,その理解は難しい(が、それが面白い).たとえば,リングカレントは内部磁気圏の磁場形状を大きく歪めて荷電粒子の運動を変える.また磁気圏で閉じることのできない余剰電流は磁力線に沿って電離圏に流れ込み,有限の電気伝導度を持つ電離圏において電場の配位を変える.その電場は直ちに磁気圏へ帰還し,荷電粒子の運動を変える.つまり,リングカレントが発達することによって,リングカレントを含め放射線帯やプラズマ圏,そして電離圏の状態まで変えてしまうのである.このように,リングカレントは磁気嵐現象の結果としての側面と,放射線帯,プラズマ圏,電離圏という他のジオスペース領域に影響を及ぼす原因としての側面がある.他領域への影響の大きさから,リングカレントは内部磁気圏研究にとって重要であるといえよう.リングカレントに関連する過程とその結びつきを図1に示す.


本稿では,太陽地球システムの観点から現在(執筆当時の2006年現在)得られている知見をもとにリングカレントについてレビューする.なお,Daglis and Thorne [1999], Daglis and Kozyra [2002], Ebihara and Ejiri [2003], Kozyra and Liemohn [2003] などにもリングカレント研究のレビューがあるので適宜参照されたい.また,リングカレントという言葉は環状の電流を連想させるが、リングカレントは環状である必然はなく、観測的にも軸対象というよりも非軸対称な分布であることがわかっている.ここでは環状か否かを区別せず,内部磁気圏を磁力線に垂直方向に流れる大規模電流をリングカレントと総称することとする.本稿が リングカレントと磁気嵐を理解することの一助となれば幸いである.

図1:内部磁気圏の粒子環境(リングカレント・放射線帯・プラズマ圏)及び内部磁気圏と密接に関係するジオスペース領域とそれらを繋ぐ過程.太陽・惑星間空間変動に応じて内部磁気圏,電離圏,熱圏システムが駆動する.

空間構造と組成

西向きの電流が外側を,東向きの電流が内側を流れる二層構造がリングカレントのおおまかな姿である.西向きに流れる電流の総量が東向きの電流に比べて卓越しているため,リングカレントの増加は地上では南向きの磁場変動として検出される.リングカレントを電流として直接観測することは非常に困難であり,

  1. プラズマ圧の空間勾配から間接的に電流を求める方法
  2. 磁場変動の回転から電流を求める方法

のいづれかが採られている.ここでは,これまでの観測結果を概観する.

プラズマ圧から見たリングカレント構造

AMPTE/CCE衛星が磁気赤道面付近で観測したプラズマ圧の空間分布を図2に示す.点線は磁気嵐前のプラズマ圧分布で,ピークがL=3付近に位置していることがわかる.実線は磁気嵐時におけるプラズマ圧分布であり,磁気嵐前と比べるとL=3以上の領域でプラズマ圧が増加していることがわかる.

図2:1984年9月4-5日の磁気嵐で観測された,リングカレント・イオンのプラズマ圧.点線は磁気嵐前のプラズマ圧分布を示している.[Lui et al., 1987]


リングカレントを正しく理解するために,プラズマ圧と電流密度の関係を述べる.もし粒子のジャイロ半径が磁場の空間変動分よりも十分小さく,場の変動時間が粒子のジャイロ周期よりも短いならば,粒子の運動は,旋回中心の運動に近似して記述できる(旋回中心近似).さらに慣性電流を無視すると,磁力線に垂直方向の電流密度 は,ジャイロ運動による磁化電流 JM,磁場勾配によるドリフト電流 JB,磁力線が曲率半径を持つことによるドリフト電流 JC の和で表すことができる.すなわち,
(1)
(2)
 (3)
(4)

を得る[Parker, 1957].ここで, P⊥は磁力線に垂直方向のプラズマ圧, P||は磁力線に平行方向のプラズマ圧, Bは磁場ベクトルを表す.展開した(1)式の第1項目はプラズマ圧の勾配による磁化電流を,第2項目は磁場の勾配による磁化電流を,第3項目は曲率による磁化電流を表している.磁化電流の各要素を図3に図示した.(1)から(3)式を総和すると,(1)式の第2項目と(2)式は互いに符号が逆であるため消去される. もしプラズマ圧が等方ならば,(1)式の第3項目と(3)式も消去され,プラズマ圧の勾配による磁化電流のみが残る.この場合,電流密度は理想MHDで示される反磁性電流と等価になる.

図3: 磁化電流の3成分.(1)磁場が均一な背景場ではプラズマ圧 の勾配により正味の電流は右方向に流れる.ここで,磁力線は紙面の反対側から手前の方向に伸びている.(2)第一断熱不変量を保存するために磁場の強い領域では磁力線に垂直方向のエネルギーが増加し, が増加する. が均一であるためには,磁場の強い領域では低い粒子密度を考えなければならない.したがって,均一な における磁場勾配による磁化電流は,左方向に流れる.ここで,磁力線は紙面の反対側から手前の方向に伸びている.(3) が均一であるとき,曲がった磁力線の内側のほうが電流密度が高くなるので,正味の電流は紙面の手前から紙面を貫く方向に流れる.



AMPTE/CCE衛星が観測した磁力線に垂直および平行成分のプラズマ圧(図4-A)と,(4)式を用いて求めた電流密度(図4-B)を図4に示した.図4-Bで示されている電流成分「Jc」は(4)式の第二項目に記述されている電流密度で,プラズマ圧勾配以外の寄与分を表している.この項は,プラズマ圧分布が等方か,磁力線が直線のとき,ゼロになる.図4-Bによると,電流密度 はL=3.5を境として,内側では東向きに外側で西向きに流れる傾向がある.これは,プラズマ圧の勾配の方向がL=3.5付近で逆転していることを反映している.地球遠方で電流密度が大きな変動を示すのは,衛星の飛翔速度が遠地点付近で低下するため,プラズマ圧の時間変動が加わった結果と考えられる.

図4: AMPTE CCE衛星が観測したプラズマ圧と電流密度の観測例.[Lui et al., 1987] 正の電流密度は西向きを示す.



次にプラズマ圧の空間分布を概観する.Lui [2003]はAMPTE CCE衛星が観測したH+とO+のプラズマ圧の平均的な空間分布を示した.地磁気擾乱指数Kpが高いとき,真夜中より夕側のH+のプラズマ圧が真夜中より朝側より若干高いという傾向は見られるが,プラズマ圧分布はほぼ軸対称に近いという結果を得ている.

H+のエネルギー密度の空間分布を磁気嵐の相(主相,回復相,静穏時)によって分けてみると,Kpで分けたときには見られなかったような地方時依存性が現れる.図5は,Polar衛星が赤道面付近を通過したときに観測したH+のエネルギー密度(1〜200 keV)の空間分布である.静穏時にはほぼ軸対称に近い分布を示すが,磁気嵐主相では,夜側のエネルギー密度が顕著に上がり,昼側のエネルギー密度が下がる.磁気嵐回復相ではそのような非軸対称性が解消される傾向にある.夜側に着目すると,エネルギー密度は主相で上がり,回復相で下がる.しかし,昼側ではエネルギー密度は主相で下がり,回復相で上がることから,エネルギー密度の時間発展は地方時によって異なることを強く示唆するものである.同様の傾向はKorth et al. [2000] による事例報告でも示されている.Korth et al. [2000] は,朝側の30 keV以上のエネルギー密度は回復相になってから上昇することを報告している.

図 5: プロトンのエネルギー密度(1-200 keV)の空間分布.磁気嵐の相によって区分けされ,左から順に,磁気嵐主相,磁気嵐回復相,静穏時を示している.[Ebihara et al., 2002]



リングカレントを担っているイオン種とエネルギーを端的に示したものが図6である.

  1. 磁気嵐前では,100 keV付近のH+イオンとHe+イオンが主にエネルギー密度を担っていることがわかる.O+イオンとHe++イオンの寄与は無視できるほど小さい.
  2. 気嵐主相になると数10 keV付近のH+イオンが増加するとともに,O+イオンの増加が全てのエネルギーの範囲で顕著に見られる.
  3. 磁気嵐回復相に入ると数10 keV付近のH+イオンと100 keV以上のO+イオンが急激に減少する.数10 keV付近のO+イオンは損失を殆ど受けてない.

また,100 keV以上のエネルギーを持つH+のエネルギー密度が磁気嵐中ほとんど変化がないことも注目に値する.つまり,100 keV以上のH+イオンは背景のリングカレントを担っており,むしろ数10 keV付近のH+イオンやO+イオン,あるいは100 keV付近のO+イオンが磁気嵐時のリングカレントを担っているといえる.静穏時に比べると,磁気嵐中は10-100 keVのH+イオンやO+イオンが増加することは図7でも明らかである.

図6: AMPTE /CCE衛星がL=4で観測したイオン種別の微分エネルギー密度.左から,磁気嵐前,磁気嵐主相,磁気嵐回復相の場合を示している.[After Krimigis et al., 1985]



図7はAMPTE/CCE衛星が静止軌道高度で観測したイオン種毎のエネルギー密度の積算比率を示したものである.静穏時には10 keVから100 keVのエネルギーを持つH+イオンが全イオンのエネルギー密度の約90%を担っており,擾乱時にはこれに加えてO+イオンの割合が高くなる.また,磁気嵐時の組成比に着目すると,H+イオンが74 %,O+イオンが21 %,He++イオンが3 %,He+イオンがほぼ0 %となっている.

図7:AMPTE/CCE衛星が観測した静穏時(左)と擾乱時(右)におけるエネルギー密度の積算比率. [Daglis et al, 1993]


電子のリングカレントに対する寄与についての知見は,イオンに比べると極端に少ない.Frank [1967] は OGO 3衛星の観測に基づき,0.2-50 keVの電子は磁気嵐中のリングカレントの25 %を担っているという報告した.最近では,Liu et al. [2005] がExplorer 45衛星観測に基いて,1-50 keVの電子のエネルギー量は静穏時にはH+イオンに比べて僅か約1 %程度の寄与であり,磁気嵐時には8-19 %に増加することを示している.電子はリングカレントの重要な構成要素であることは示されているものの,1971年に打ち上げられたExplorer 45衛星以降,リングカレントの中心部で電子とイオンのエネルギー密度を観測したという例は殆ど報告されておらず,イオンに比べて観測が少ないのが現状である.

磁場変動から見たリングカレント構造

アンペールの法則は電流が流れると右ねじの方向に磁場が生じることを教えている.つまり,磁場を観測ればリングカレントの分布を導出することが可能である.きく6号衛星が赤道面付近で観測した磁場変動ベクトルを基に導出した電流密度ベクトルを図8に示す.磁気嵐主相から回復相初期にかけて,夜から夕方の領域で強い西向きの電流が発達していることがわかる.

図8:きく6号衛星が観測した磁場変動から導出した電流密度. [Terada et al., 1998]



Le et al. [2004] はISEE,AMPTE/CCE,Polar衛星が観測した20年間に及ぶ磁場データを用いて電流密度の3次元分布を求めた(図9).プラズマ圧から見たリングカレントと同様,リングカレントは夜側が強く昼側が弱いという非軸対称性を示している.また,L=3.5付近を境に外側では西向き,内側では東向きの電流が流れていることを直接的に示している. 東向きの電流は荷電粒子のドリフト電流では説明ができない.(1)式の磁化電流の存在が重要であることが分かる.

図9:磁場ベクトルの回転から算出した電流密度.赤色は西向きの電流を,青色は東向きの電流を表している.[Le et al., 2004]



一機の衛星観測からその瞬間の電流密度を求めることは困難であるが,四機編隊衛星であるCluster衛星が得た磁場データを用いて,Vallat et al. [2005] はその瞬間の電流密度を求めた.1700 MLT付近から0100 MLT付近に広がる西向きの電流や,リングカレントは高緯度にも広がっていることなど,他の手法で得られた結果と一致するような結果を得ている.

高速中性原子から見たリングカレント構造

イオンが中性原子(地球コロナ)との電荷交換反応によって中性化すると,磁場の束縛を受けずに自由に宇宙空間を飛翔するようになる.このような高速な中性原子をENA(Energetic Neutral Atom)と呼ぶ.IMAGE衛星はENAの2次元画像を捉えることを目的とした3種の観測器を搭載し,2分ごとのスナップショットを得ることに成功した.その一例を図10に示す.惑星間空間磁場が南を向いたしばらく後,夜側(「A」と示されている)から放射されるENAが次第に増加する一方,昼側(「SUN」と示されている)から放射されるENAは著しく減少する.このような短い時間スケールの空間変動は衛星による直接観測では得がたいものであり,イメージ観測の威力を発揮するものである.

図10:(a)南北方向の惑星間空間磁場,(b,c)IMAGE衛星が撮像した16-50 keVのエネルギーを持つ高速中性原子(ENA) の時間変化. [Brandt et al., 2002]



ENAの観測からその放射源となるイオンのフラックスを再構成(インバージョン)しようという試みは,Perez et al. [2001] とDeMajistre et al. [2004] によってそれぞれ独立になされている.しかし,観測されるENAのフラックスは視線方向の積分値であるため,インバージョンを行うには磁場やピッチ角分布などの仮定を制約条件とした与える必要があり,一般に困難である.インバージョンで得られたフラックスを直接観測したものと比較的し,両者はよく一致することをVallat et al. [2004] は報告している.

供給過程

図6に示されているように,リングカレント中には太陽風が起源と思われるHe++が含まれている一方,太陽風中では殆ど見られないO+も観測されている.このことから,リングカレントは太陽起源の粒子と電離圏起源の粒子が混在していると考えられる.

太陽風起源のイオン

太陽風中のイオンが磁気圏境界を通して磁気圏内に輸送される過程について,1) リコネクション,2) 低緯度境界層における拡散的輸送,3) カスプ域からの直接流入などが考えられている.いずれの流入過程においても,太陽風から輸送されたイオンは対流電場によって夜側のプラズマシートに蓄積されやすい.多くのリングカレントの議論においては,プラズマシートの状態をリングカレントの境界条件として与え,内部磁気圏を外部磁気圏から独立した系と考えることが多い.

夜側のプラズマシートはリングカレントを担うイオンの重要な供給源として重要である.シミュレーション研究によると,平均的なプラズマシートの密度では磁気嵐で発達するリングカレントの大きさを説明しにくい場合があり,プラズマシートの密度の増加もリングカレントの発達に大きく寄与することが指摘されている [Chen et al., 1994; Kozyra et al., 1998b; Ebihara and Ejiri, 2000; Kozyra and Liemohn, 2003].観測的にも,Dst指数と静止軌道におけるプラズマシートの密度は良い相関があることが示されている[Thomsen et al., 1998].

地球近傍のプラズマシートの密度と太陽風の密度もまた良い相関があるという観測事実から[Terasawa et al., 1997; Borovsky et al., 1997; Ebihara and Ejiri, 2000],リングカレントの発達には太陽風の密度も積極的に関わっていると考えられる.Smith et al. [1999] は多偏線形相関解析法を用い,Dst指数と太陽風密度・太陽風電場の間の独立相関係数を求めている.それぞれの間には良い相関があること,太陽風密度とDst指数の間には5時間の時間差が,太陽風電場とDst指数の間には1時間以内の時間差があることを示した.その後,O'Brien and McPherron [2000] がより多くの磁気嵐について独立相関係数を求めたところ,太陽風の密度とDstの間には明確な相関が見られなかった.O'Brien and McPherron [2000] は,1994年11月から1995年9月までの短い期間に限って太陽風の密度とDst指数の間に良い相関が現れることも見出しており,この期間はSmith et al. [1999] が着目した期間に含まれる.したがって,太陽風の密度とDst指数の相関は時期によって異なることが示唆される.

Borovsky et al. [1998]は,1993年11月の磁気嵐では静止軌道における密度の増加が太陽風密度の増加に対して約4時間の時間差で応答したという事例を報告し,Ebihara et al. [2005]は,2003年11月の巨大磁気嵐では約80分という短い時間差で応答したと報告している.磁気嵐によって太陽風密度とプラズマシート密度の応答時間が異なることから,太陽風からリングカレントへのイオンの輸送過程は様々な要因が介在している複雑なものであることが示唆される.

電離圏起源のイオン

電離圏から流入したイオンが,電離圏の典型的な温度である0.1 eV程度から,磁気圏における数10 keVいう5桁以上も高いエネルギーをどのように獲得するのかを説明するために, 1) 波動やオーロラに伴う沿磁力線方向の静電場による低高度での加速,2) 曲率をもった磁力線の通過に伴う向心力加速,3) 尾部における磁気中性面付近における蛇行軌道(Speiser/meandering軌道),4) 断熱的加速,が提案されており,数値シミュレーションによる検証が行われている [Delcourt et al., 1989; Cladis and Francis, 1992; Peroomian and Ashour-Abdalla, 1996; Winglee; 1998; Moore et al., 2005; Ebihara et al., 2006].また,電離圏からリングカレント域にイオンが効率よく流入するためには,1) 重力に抗するための脱出速度を有していること,2) ピッチ角が散乱され地球磁場に捕捉されること,3) リングカレント域に流入する前に加速を受けすぎないこと,の三つの必要条件がさらに課せられる.二番目の条件が満足されないと,電離圏から流出したイオンは反対半球に落下するだろうし,三番目の条件が満足されないと,磁場ドリフトによって,リングカレント域へ流入する代わりに磁気圏境界に到達する[Ebihara et al., 2006].

プラズマシートを介さずに,電離圏からリングカレントの中心部へ直接イオンが供給されたと考えられている観測事例を図11に示す.リングカレントの中心部のイオンのピッチ角分布は,通常ピッチ角90度をピークとするround-top型である.ところが,観測された40keV付近のイオンのピッチ角は30度付近にピークを持っていることから,Sheldon et al. [1998] は電離圏からリングカレント域へ直接流入している証拠であると解釈した.

図11: Polar/CEPPAD/IPSが観測した磁力線に沿った40 keV付近のイオンビーム.「+」印はピッチ角90度,「・」印はピッチ角30度を示す. [Sheldon et al., 1998]



輸送過程

対流電場による輸送

内部磁気圏には朝側から夕方側へ向かう電場(対流電場)が印加されており,電場の大きさは惑星間空間磁場やKp指数と良い相関のあることは知られている [Baumjohann et al., 1985; Rowland and Wygant, 1998; Matsui et al., 2004].Cluster衛星がブーメラン法によって観測した電場ポテンシャルを図12に示す.共回転電場が印加されているため,準慣性系で見た電場ポテンシャルとなっている.電離圏における対流電場の観測と同様,惑星間空間磁場が南向きの場合,電場ポテンシャルは強まっている.

図12:Cluster衛星が観測した内部磁気圏電場ポテンシャル.[Matsui et al., 2004](a)惑星間空間磁場が北向きの場合,(b)南向きの場合.灰色の領域は,閉じたポテンシャル線を示す.



ここで,シンプルなVolland-Stern型対流電場モデル[Volland 1973; Stern 1975]を用いて,内部磁気圏粒子のドリフト運動を考えてみる.Volland-Stern型モデルは,一般に次式で表現される.
(5)
ここで,Aは対流電場の大きさ,Rは赤道面での地球からの距離,γは遮蔽係数,φはMLT,φ0は対称軸のずれ角である.AはKp指数とよい相関があるとされ,Maynard and Chen [1975] は
(6)
という関係式を提唱した.ただし,γ=2の場合に有効である.一方,遮蔽係数?の値が大きいほど遮蔽効果が大きく,1の場合は朝側から夕方側に向かう一様な電場となる.観測的には遮蔽係数γは1から4.2の間をとることが知られている[Heppner, 1972; Ejiri et al., 1978; Southwood and Kaye, 1979; Baumjohann and Haerendel, 1985].また,Ejiri [1981] はプラズマポーズの形状から,
(7)
という関係式を導いた.Kp値が高いほど遮蔽効果が弱くなることを表している.

簡単のため赤道ピッチ角90度の粒子を考えると,粒子の全エネルギーTは
(8)
で表される.μは磁気モーメント,Bは磁場の大きさ,qは電荷である.磁気赤道面における等エネルギー線の例を図13に示した.全エネルギーは保存されるので,磁気モーメントμを持つ粒子は等エネルギー線上をドリフトする.ここで,ダイポール磁場,Volland-Stern型対流電場(γ=2),共回転電場を仮定している.磁気モーメントがゼロの粒子軌道が1800 MLTで作る淀み点(R0)を1とするよう規格化されている.磁気モーメントがゼロの場合(図13-a),開いているドリフト軌道と閉じているドリフト軌道の境界の形状は水滴状になり,その内側が理想的プラズマ圏に相当する.境界までの距離は1800 MLTで最大となり,0600 MLTで最小となる.磁気モーメントが上がるにつれ,磁場勾配ドリフトの効果により境界は内側へと移動する(図13-b,-c).そして,図13-dに示されているように,地球を周回しない閉じたドリフト軌道が1800 MLT付近に現れる(バナナ軌道).さらに磁気モーメントが上がると,境界の形状は再び水滴状となり,地球中心から境界までの距離は0600 MLTで最小となる.磁気モーメントが大きくなるほど境界は地球から離れるので,高い磁気モーメントを持つ粒子は,プラズマシートから地球に近づくことが難しくなる.

図13から三つの基本的な特徴を読み取ることができる.

  1. プラズマシートを出発したあるエネルギーを持つイオンは,理想的プラズマ圏境界よりも内側をドリフトすることができる(リングカレントとプラズマ圏の接触).
  2. リングカレントを担うようなイオンは,朝側に比べて夕側で最も地球の近くをドリフトし,夕側で最も断熱的にエネルギーを得る.
  3. 夕側では,地球に最も近づくことのできる磁気モーメントが存在し,朝側では,磁気モーメントがゼロのイオンが地球に最も近づくことができる.

図13はシンプルな電場,磁場モデルを前提とした理想的なドリフト軌道を表現しているが,次に挙げるように多くの現象を説明することができる.1) リングカレントとプラズマ圏が接触する領域が夕側にある.接触域では,クーロン衝突を通してエネルギーがプラズマ圏の冷たいプラズマに伝わり,熱流束が電離圏に到達すると酸素原子が励起され,SARアークと呼ばれる波長630.0 nmの赤いオーロラが発光する[Kozyra et al., 1987].2) 夜側を出発したイオンが地球に最も近づくことのできる距離は磁気モーメントによって決まり,夕側ではノーズ型分散構造として表れる.ノーズ分散構造の存在はイオンが対流電場によって運ばれていることの傍証となる.

図 13:1価の電荷を持つイオンの規格化ドリフト軌道.(a) 磁気モーメントがゼロの場合,(b) 規格化磁気モーメントμ’=0.029, (c) μ’=0.064, (d) μ’=0.083, (e) μ’=0.109, (f) μ’=0.2の場合を示している.μ’は規格化した磁気モーメント(μ’=μ/qωR0^2)である.ここで,ωは地球自転の角速度,R0は(a)の場合の1800 MLTにおける淀み点までの距離である.ここでVolland-Stern型電場モデルとダイポール磁場を仮定している.[Ejiri, 1978]



Explorer 45衛星によって観測されたノーズ型分散構造を図14に示す.3) 磁気嵐主相のリングカレントが,真夜中と夕側で発達するのは,高い磁気モーメントを持つイオンが夕側で地球に最も近づくことができるためである.ダイポール磁場を仮定すると,赤道ピッチ角が90度の粒子の場合L-3に比例してエネルギーが断熱的に増加し,0度の場合はL-2に比例して増加する[Ejiri, 1978].したがって,より地球の近くをドリフトすることは,結果としてより高いエネルギーを獲得することを意味する.対流電場が発達すると(A値が高くなると)R0が小さくなるので,夜側を出発したイオンは,より地球の近くをドリフトするようになる.現実の磁気圏では対流電場の大きさは刻々と変化し,イオンは有限の時間でドリフトするため,イオンの分布は複雑で時間依存を有するようになる.

図 14:Explorer 45衛星が観測したイオンのプラズマシートの内側境界付近.スペクトルの先端の形状から「ノーズ分散構造」と呼ばれている. [Ejiri, 1978]



次に,対流電場が急激に弱まった場合を考えてみる.開いたドリフト軌道と閉じたドリフト軌道の境界の位置は,対流電場が弱まると地球から遠ざかる.それまで開いたドリフト軌道を進行していたイオンの一部は,閉じたドリフト軌道に乗り移り地球を周回するようになる(図15).このドリフト軌道の遷移は,マクロ的に見ると夕側で高くなったイオンのエネルギー密度が経度方向に散逸することに相当し,磁気嵐回復相で見られるエネルギー密度の軸対称化を説明する (図5).新しく閉じたドリフト軌道に乗り移ったイオンは,地球を周回するうちに電荷交換反応などによってやがて失われていく.

図15:リングカレントを担うイオンの典型的なドリフト軌道の模式図.対流電場が強いとき(左)と対流電場が弱いとき(右)を表現している.[Ebihara and Ejiri, 2003]



サブストームに伴う誘導電場による輸送

サブストームは多くの現象を内包する言葉であるが,ここでは,尾部の磁場形状が双極子型から尾型へ変形し,そして尾型から双極子型へ戻る一連のサイクルをサブストームと呼ぶこととする.磁場の形状が変動するのに伴い,誘導電場 が作られる.ここで,Aはベクトルポテンシャルである.磁場の形状が尾型から双極子型に遷移するとき,誘導電場は朝側から夕方側へ向くので粒子を地球側へ送り込むことができる.対流電場による粒子加速の上限は磁気圏に印加された電位差によって決まるが,誘導電場による粒子加速にはそのような上限はない.

サブストームに伴う突発的な粒子注入現象は,静止軌道衛星ATS-5によってよく調べられた[DeForest and McIlwain, 1971; McIlwain, 1974].プラズマシートの内側境界の位置は,電子とイオンのそれぞれのエネルギーに依存する.観測された内側境界の位置から粒子のドリフト軌道を逆追跡すると,エネルギーに依存しない共通の出発点(出発線)が見つかる.この出発線は「注入境界(injection boundary)」と呼ばれており[Konradi, 1975],サブストームの拡大相の開始とともにイオンと電子が同時に注入境界から太陽方向にドリフトを一斉に開始する位置と解釈されている.もし,衛星が注入境界で粒子の注入を観測したらならば,フラックスの増加にエネルギー依存性が見られない.このような粒子注入を「エネルギー分散の無い注入(dispersion-less injection)」と呼ぶ.

静止軌道上の粒子観測から求めたサブストームの開始時刻と,地上の磁場観測から求めたサブストームの開始時刻がよく一致し[Kamide and McIlwain, 1974],そのような粒子注入現象は静止軌道上でよく観測される一般的な現象である.しかし,静止軌道より内側では観測例が少なく,サブストームによってどのくらい内側まで粒子が注入されているか殆どわかっていない.GTO軌道のCRRES衛星と静止軌道上のLANL衛星の同時観測によると,少なくともL=4~5付近まではサブストームによって突発的に粒子フラックスが増加していることが報告されている[Reeves et al., 1996].また,「サブストームが磁気嵐の発達にどのくらい寄与しているか」というサブストーム研究が始まって以来の長年の疑問に答えうる定量的な観測結果は報告されていない.その原因のひとつは,サブストームによる内部磁気圏への粒子注入量を見積もることが,人工衛星の1点観測ではほぼ不可能であることに起因する.

2001年に打ち上げられたIMAGE衛星は,高速中性粒子(Energetic Neutral Atom)のグローバルな撮像を可能にした.図16に,リングカレント域から放出されたと考えられるHとOのフラックス変動を示す.同時にIMAGE衛星によって撮像されたオーロラ画像と比べることによって,HとOのフラックス変動とオーロラ・サブストームとの関係を見ることができる.オーロラ・サブストームにともなって,HとOのフラックスは確かに増加していることは明らかである.興味深いことに,フラックスの増加はHとOで必ずしも同時に一致しない.たとえば,HとOのフラックスは1700 UT頃にほぼ同時に増加を開始し,1730UT頃に両者ともピークに達する.その次に現れるフラックスのピークはHのほうがOより10分程度先行する.2120 UTに再び中Oのフラックスは増加を始めるが,Hフラックスは殆ど変化しない.O+のほうがH+に比べてサブストームによって加速されやすいというシミュレーション的研究はあるが,イオン種によってサブストームに対する応答時間が異なることを説明する過程は提案されていない.また,オーロラ・サブストームによって増加したフラックスは1~2時間の時定数で急速に減少する.このことはサブストームによる粒子供給は間欠的であることを示唆しており,Dstの発達に対するサブストームの役割を,粒子の立場から知る手がかりとなるかもしれない.

図 16:IMAGE衛星が観測した中性水素原子フラックス(27-60 keV, 60-119 keV)と中性酸素原子フラックス(52-180 keV).同じくIMAGE衛星が観測した紫外域のオーロラ画像は下の段に示されている.オーロラ・サブストームに対する応答が,水素原子と酸素原子で異なる. [Mitchell et al., 2003]



消失過程

リングカレントを担うイオン(~102-105 eV)の主な消失過程を表にまとめた.リングカレントを担うイオンの行く末は,1) 高速中性原子となってリングカレント域を逸脱するか,2) 電離圏に降下するか,3) 惑星間空間へ流出するかのいずれかである. リングカレント域から昼側の磁気圏境界を通して大量のイオンが惑星間空間へ流出すると考えられるが,同時に夜側からはイオンが流入するので,惑星間空間への流出が必ずしも正味の電流量の減少をもたらすものではないことに注意したい.

過程 領域・原因 結果・行き先
電荷交換反応 中性大気(地球コロナ) 高速中性粒子
クーロン散乱 冷たいプラズマ (プラズマ圏) 電離圏
クーロン減衰 冷たいプラズマ (プラズマ圏) エネルギー交換 (熱流束は電離圏)
波動粒子相互作用 イオンサイクロトロン波 電離圏
断熱的ピッチ角変化 ロスコーン角の空間変化と第二不変量の保存 電離圏
第一不変量の破れ 粒子の旋回半径が磁力線の曲率に比べて小さいとき 電離圏
流出 磁気圏境界 惑星間空間



電荷交換反応

中性水素原子との電荷交換反応によってイオンは中性化し,リングカレント域から逸脱する.そのライフタイムは次式で表される.


ここで,nHは中性水素の密度,vはイオンの速度,?CHは衝突断面積である.粒子間の衝突が頻繁に起きない地球上層大気からは大きな熱速度をもった粒子が散逸しており(Jeans Escape),地球の周囲の中性水素密度は高くなっている.これを地球コロナ呼ぶ.地球中心から3 Reの距離で密度は約500-1000 cm-3,6 Reで約50-100 cm-3と見積もられている.地球コロナのモデルとして,地球周囲で撮像されたライマンα線やバルマーα線の高度変化を理論モデルにフィットしたものや[e.g., Rairden et al., 1986; Ostgaard et al., 2003],モンテカルロ・シミュレーションによるもの[e.g., Hodges, 1994]が提案されている.Hodges [1994] は,地球コロナの密度分布は球対称ではなく,また太陽活動や季節に依存するようなモデルを提案している.衝突断面積は実験室で得られており,H+とHについてはJanev and Smith [1993],He+とHについてはBarnett [1990] が,O+とHについては Phanef et al.[1987] がそれぞれ電荷交換反応の衝突断面積を示している.

電荷交換反応によるイオンのライフタイムを図17に示した.リングカレントの主成分であるH+とO+に着目すると,約45 keVより低いエネルギーについてはH+のライフタイムがO+に比べて短いが,約45 keV以上については逆転する.このようなイオン種によって異なるライフタイムは,リングカレント中のイオンの組成比に大きく関わっていると考えられる.

図 17:H+,He+,O+の電荷交換反応による損失ライフタイム,クーロン減衰による損失ライフタイム,強散乱限界ライフタイム. [Ebihara and Ejiri, 2003]



 地球コロナの密度は地球に近いほど高いので,赤道ピッチ角の小さいイオンほど電荷交換反応を受けやすい.Smith and Bewtra [1976] は,次式のようなバウンス平均したライフタイムの近似式を提案している.
b>=τcos3.5 λm   (10)
ここで,λmはミラー緯度である. 図17で示した電荷交換反応のライフタイムτに(10)式の補正式を適用することで任意の赤道ピッチ角を持つイオンの損失ライフタイムを求めることができる.

 Hamilton et al. [1988] は,磁気嵐が最も発達したときにO+の寄与が卓越することを報告し,磁気嵐の回復相で見られるDst指数の二段階回復は,O+とH+で異なる衝突断面積が原因であることを提案した.つまり,O+の持つ早い電荷交換反応が磁気嵐回復相初期に見られる早い回復を作り,H+の持つ遅い電荷交換反応が回復相後半の遅い回復を担うという考えである.しかし,シミュレーション研究によると異なる衝突断面積ではDst指数の二段階回復を説明できないことが指摘されている[Kozyra et al., 1998a].

リングカレント域を逸脱した高速中性原子の一部は地球へ向かい,地球近傍で再び電荷交換反応することによって,新たなリングカレントを生成することは以前から予測されてきた[Tinsley, 1981].Soraas et al. [2003] とSorbo et al. [2006] は,低高度衛星による観測で磁気赤道付近に新たなリングカレントを確認し,Storm-Time Equatorial Belt (STEB)と名づけた.STEBは大きな磁気嵐時に磁気赤道付近を中心とする極めて低緯度に現れ,外側からのイオンの輸送ではSTEBの形成を説明することは困難である.図18にはSTEBの観測例を,図19にはSTEB形成の模式図を示す.

図18:NOAA 15衛星によって観測された,赤道付近に現れた新たなリングカレント.[Sorbo et al., 2006] Aは磁気嵐前,Bは磁気嵐中の粒子フラックスを示している.



図19:新たなリングカレントの形成を説明する模式図.[Soraas et al., 2003]リングカレントの主要部から放出された高速中性原子が,地球近傍で再び電荷交換反応をおこし,新たなリングカレント(Storm-Time Equatorial Belt)を形成すると指摘されている.



クーロン衝突

プラズマ圏のように冷たいプラズマの密度が高い領域では,クーロン衝突によってイオンのピッチ角が散乱され(クーロン散乱),またエネルギーを失う(クーロン減衰).クーロン散乱によるイオンの損失量は,クーロン減衰による損失に比べると2桁程度小さいので,クーロン散乱は無視できると言われている[Jordanova et al., 1996].Wentworth et al. [1959] は,熱的プラズマの速度分布関数をデルタ関数と仮定し,クーロン減衰によるイオンの損失ライフタイムを定式化した.熱的プラズマの速度分布関数をマクスウェリアンとした場合のライフタイムはFok et al. [1991] によって定式化されている.クーロン減衰によるライフタイムを図17に示す.10-100 keVのH+に着目すると,電荷交換反応による損失ライフタイムに比べてクーロン減衰による損失ライフタイムは著しく長い.また,プラズマ圏は磁気嵐の発達に伴って内側へ縮小することから,プラズマ圏とリングカレントが接触する領域は狭い領域に限られる.この二つの理由により,クーロン減衰はリングカレントを担うH+の損失機構としては無視できるほど小さいと言われている.

クーロン衝突を経て,リングカレントを担うイオンとプラズマ圏の冷たいプラズマは効率的にエネルギーを交換する.プラズマ圏の温度を1 eVとすると,最も効率よくエネルギー交換ができるエネルギーは,H+の場合は4 keV,O+の場合は50 keVである [Kozyra et al., 1987].プラズマ圏電子に渡されたエネルギーは,熱として磁力線に沿って電離圏へ伝わり,電離圏の酸素原子を励起して赤いオーロラを発光させる.これがStable Auroral Red Arc (SAR Arc)の原因であると言われている[Kozyra et al., 1997].

波動粒子相互作用

イオンサイクロトロン波動(EMIC波)は磁気圏でよく観測される波動であり [e.g., Anderson et al., 1992], 10-50 keVのイオンの温度非等方性()によって励起されると言われている[e.g., Cornwall, 1977].そのようなイオンの温度非等性は電荷交換反応によって容易に作られる.Jordanova et al. [1997] は,リングカレントを担うイオンと冷たい多成分プラズマを考え,EMIC波の成長率を波の伝播経路に沿って計算した.準線形理論に基づいた拡散係数を用い,EMIC波によってリングカレントを担うイオンが損失する量を求めたところ,リングカレントとプラズマ圏が接する夕側のプラズマ圏境界付近でEMIC波が効率よく成長し,イオンを散乱させることがわかった.シミュレーションによって得られた降下H+のフラックスを図20に示す.

図20:シミュレーションによって求めた電離圏へ降下するH+フラックス.(上)波が無い場合と(下)EMIC波がある場合のフラックスを示している.[Jordanova et al., 1997]





EMIC波によってリングカレントを担うプロトンが降下した間接的証拠はIMAGE衛星によって得られている[e.g., Burch et al., 2002; Fuselier et al., 2004].図21はIMAGE衛星が観測したプロトン・オーロラ像で,オーロラ・オーバルから独立した発光が低緯度方向に少し離れた領域で見られる.図21の左図はプロトン・オーロラの発光がプラズマ圏密度の急激な低下に相当する領域でおきていることを示しており,EMIC波の成長に冷たいプラズマの密度分布が大きく寄与していることを示唆している.図21の右図は冷たいプラズマ密度がEMIC波の成長に大きくは寄与しなかったと思われる例で,オーロラ・オーバルと低緯度側のオーロラの間に発光の隙間が見られない.  EMIC波は相対論的エネルギーを持つ電子(数MeV)と共鳴することが知られており,放射線帯電子の損失過程を考える上で重要だとの指摘がされている[Thorne and Kennel, 1971].この過程については,本誌「放射線帯」(三好著)で詳しく述べられているので,ここでは割愛する.

図20:シミュレーションによって求めた電離圏へ降下するH+フラックス.(上)波が無い場合と(下)EMIC波がある場合のフラックスを示している.[Jordanova et al., 1997]



断熱的ピッチ角変化

地球方向へドリフトする粒子を考える.磁力線の長さは地球に近いほど短くなるので,第一・第二断熱不変量を保存するためには,赤道ピッチ角が大きくならなければならない.L値に対するピッチ角の変化率は,ロスコーン角の変化率に比べて小さいため,ピッチ角の小さい粒子は拡がったロスコーンに入ることがある.これを断熱的ロスコーン損失と呼ぶ.ダイポール磁場の場合のピッチ角の断熱的変化とロスコーンの変化を図22に示す.図20(上)に示されている降下H+フラックスは,断熱的なピッチ角変化によってロスコーンに入ったフラックスである.

図 22:ダイポール磁場におけるロスコーン角(太線:吸収高度600km, 1200 km)と, 第一・第二不変量が保存する場合の赤道ピッチ角(細線). [Ebihara and Ejiri, 2003]



第一断熱不変量の破れ

磁力線の曲率半径がイオンのラーモア半径に比べて小さくなると,第一断熱不変量は保存されなくなる.そのような状況では,イオンは強いピッチ角散乱を受けて等方的分布に近くなり,ロスコーンも満たされようとする.このような状況は夜側では静止軌道付近を含む広い領域で起きていると考えられている.低高度衛星の観測によると,広い領域でイオンのピッチ角分布が等方的となっていることから,波動粒子相互作用よりも磁力線の曲率半径が小さくなることによる第一断熱不変量の破れがもっとも説明しやすい過程であると考えられている[Sergeev et al., 1983; 1993].図23に等方的なイオンの降り込みの観測例を示す.等方的なイオンの降り込みが見られる低緯度境界はIsotropic Boundaryと呼ばれる.Isotropic Boundaryの緯度と磁気赤道面付近の磁力線の傾きは良い相関があり,このことはイオンのピッチ角散乱が赤道面付近で起きていることの間接的な証拠であるとされている[Sergeev et al., 1993].

Kozyra et al. [1998a] は,複数の低高度衛星が観測した降下イオンのフラックスを全球にわたって積分し,リングカレントから電離圏へ降下するイオンの全エネルギーを求めた.磁気嵐回復相の初期では,電離圏へ降下するイオンの全エネルギーが電荷交換反応によって失われるリングカレントの全エネルギーとほぼ同量であることから,電離圏に流出するイオンが磁気嵐回復相の初期に見られるDst指数の早い回復に大きく関わっていることが示唆される.

図23:低高度衛星NOAAが観測した等方的な降下イオンの観測例.[Gvozdevsky and Sergeev, 1996]



磁気圏からの流出

リングカレントを担うイオンが磁気圏境界に到達した後,1) 磁気圏外へ流出するか,2) カスプを通り高緯度の磁力線に乗り移るか,3) 低緯度境界層付近を通り磁気圏尾部へ流出することが考えられる.磁気圏から流出したと思われる一価の重イオンがマグネトースやバウショックの上流側でも観測されていることから,イオンが磁気圏外へ流出しているという直接的な証拠は得られている [Zong and Wilken, 1999; Keika et al., 2004].しかし,どのくらいのイオンが磁気圏から流出し惑星間空間に散逸するか,他の経路を通るイオンはどのくらいあるのか,依然わからないことが多い.

他の領域との結合

電流源としてのリングカレント(電離圏・プラズマ圏との結合)

 リングカレントは磁力線に垂直方向に流れる電流であるが,磁気圏で閉じることのできない電流は磁力線に沿って電離圏へ流入する.電離圏では,電流密度の発散がゼロになるように電場が新たに発生する.この電場は対流電場を抑制する方向に発生することから,遮蔽電場と呼ばれている.遮蔽電場はただちに磁力線に沿って磁気圏へ伝えられ,磁気圏粒子のドリフト軌道に影響を与える.プラズマ圏の形状にも当然影響を与えることから,リングカレントとプラズマ圏は電離圏を通して電気的に結合しているとも言える.Fok et al. [2005] は磁気圏と電離圏が電気的に結合したシミュレーションの結果とIMAGE衛星が観測したプラズマ圏画像を比較し,両者が電気的に結合しているという事例を示している.

また,磁気嵐回復相初期のようにリングカレントの強度が大きく対流電場が弱い場合は,遮蔽電場が対流電場を凌ぐような,いわば過遮蔽状態(over shielding)がおきることが観測されている[Kelley et al., 1979]. 夕側ではリングカレント起源の下向きの沿磁力線電流がオーロラ帯よりも低緯度側に流れることから,電流を閉じるために強い極向きの電場が局所的に生成される.結果として流れる西向きの高速プラズマ流をSubAuroral Polarization Stream (SAPS)と呼び,Millstone Hillレーダーの観測によると,緯度幅は約3-5度,平均速度は900 m/s以上であることが報告されている[Foster and Vo, 2002].

電離源としてのリングカレント(電離圏との結合)

 リングカレントを担うイオンが電離圏へ降下すると,特にE領域の電子密度が上昇する.夕側では電子に比べてイオンのほうが地球側(低緯度側)にドリフトしやすいことから,イオンは夕側サブオーロラ帯の重要な電離源であると指摘されている[Galand and Richmond, 2001].電離圏電気伝導度は遮蔽電場の大きさを決定するので,イオンの降り込みはただちに遮蔽電場を通してリングカレントの分布に影響を与える[Ebihara et al., 2004].

オーロラ発生源としてのリングカレント(電離圏との結合)

 1)リングカレントを担うイオンが電離圏に降下すると,濃い中性大気との電荷交換によって中性化し,バルマーα・β線などの水素の基線が発光する(プロトン・オーロラ).2) リングカレントの持つエネルギーがクーロン衝突を通してプラズマ圏電子に渡され,磁力線に沿って熱流速が電離圏に伝わると,F領域で酸素原子が励起し,波長630.0 nm [OI]の赤いオーロラが発光する(Stable Auroral Red Arc)[Kozyra et al., 1997].3) 電荷交換反応によって放出した高速中性原子の一部は地球に向かい,赤道付近でオーロラを発光させる(Neutral Particle Aurora)[Zhang et al., 2006].

内部磁気圏の磁場構造を支配するリングカレント(放射線帯粒子との結合)

内部磁気圏は荷電粒子が効率よく捕捉される空洞(キャビティー)であると考えると,その空洞の形状を決定する主な原因がリングカレントである.磁気嵐時にはリングカレントの発達により内部磁気圏の磁場が膨張するため,粒子の磁場ドリフト軌道は静穏時に比べて大きく歪む.また,赤道面磁場の減少は粒子を断熱的に冷却することから,特に高エネルギー粒子のフラックスを減少させる(リングカレント効果 [McIlwain, 1966; Lyons and Williams, 1976]).

磁気嵐における深内部磁気圏の磁場変動をモデル化するため,観測値を用いて仮定した電流系のパラメータを決めるという統計的な手法や[e.g., Tsyganenko and Sitnov, 2005],プラズマ圧分布と磁場構造の力学的バランスを考慮して磁場構造を求める計算[Zaharia et al., 2005]が近年はじまっている.

波動の励起源としてのリングカレント(放射線帯粒子との結合)

リングカレントを担うイオンの温度異方性はEMIC波の自由エネルギーとなる.EMIC波はリングカレントを担うイオンや1-2 MeVの放射線帯電子のピッチ角を散乱させ,それらの電子の大きな損失要因となると言われているいことから,リングカレントの消長は放射線帯研究にとって極めて重要である.

リングカレントに対する誤解

洋書和書を問わず多くの教科書ではリングカレントを「イオンは西向きに、電子は東向きにドリフトするため、リングカレントは西向きに流れる」と説明している.この説明はシンプルでわかりやすいし,一見正しいようにも見える.しかし,(4)式が示すとおり、粒子の旋回運動に伴う電流(磁化電流)があることを思い出せばこれは誤解だとすぐにわかる.説明しよう.まず,磁場勾配ドリフト(JB)による電流は磁化電流(JM)に含まれる一つの項と完全に打ち消されてしまう.また,内部磁気圏ではP⊥>P||であることが多いので曲率半径ドリフト(JC)は東向きに流れる傾向がある(図4).つまり,ドリフトによる電流は必ずしも西向きではなく,東向きにも流れる.これは,上記の説明と矛盾する.次に,プラズマ圧が等方的(P⊥=P||)である場合を考えよう.この場合,曲率半径ドリフト電流も磁化電流に含まれる一つの項によって打ち消されてしまう.つまり,ドリフト電流は全て打ち消され,粒子の密度が空間的に異なる場合(∇P)に旋回する粒子の差異によって電流が流れるのである(図3-1).興味深いことに,プラズマ圧が等方的(P⊥=P||)であるときは電磁流体方程式で表現される反磁性電流と等しくなる.粒子の運動から導出した電流と,電磁流体方程式に出てくる運動量の方程式から導出した電流が一致するのである(慣性電流は無視する).観測によると内側では東向きの電流が外側では西向きの電流が流れている.この観測事実を上記の説明で合理的に理解することは到底不可能である.一方、地球を周回するイオンが環状リングカレントとなり、磁気嵐の原因となるという考え方もあるようである。これも磁化電流の存在を忘れた結果だと思われる。磁気嵐時に発達するリングカレントは内部磁気圏に蓄積したプラズマ圧(イオン)が原因であり、個々のイオンが地球を周回する必要はない.

まとめ

リングカレントは,太陽風が持つエネルギーが内部磁気圏に集積した結果であるという側面と,内部磁気圏の磁場構造や電離圏の状態を変化させて磁気嵐特有の現象を作る原因となるという側面の二つを持っている.原因の側面の例として,磁気嵐の発達に伴って強まったリングカレントは磁場構造を歪めてリングカレントを担うイオンや放射線帯粒子のドリフト軌道やフラックス変動に大きく影響することや,リングカレントが駆動する電流系は電離圏対流を歪め西向きの高速流や遮蔽電場という二次的効果を生むことが挙げられる.これらの事実は,電離圏を含むジオスペース空間を一つの系として磁気嵐現象を理解する必要があることを強く示唆している.

内部磁気圏研究を進める上で大きな障害となっているのは,内部磁気圏の基本場がよくわからないことである.例えば,内部磁気圏における力学的バランスや沿磁力線電流の駆動源を理解するためには,プラズマ圧分布を知る必要がある.内部磁気圏では,数100 eVから数MeVに至る広いエネルギー範囲のイオンがプラズマ圧を担うが,このような広いエネルギー範囲の粒子を磁場と電場と同時に計測した衛星はかつて無い.広いエネルギー範囲の粒子を磁場と電場と同時に,そして赤道傾斜角が小さく,赤道面周辺を集中的に観測する探査機が,背景場の理解に威力を発揮するだろう.また,非線形な系を理解するためには観測だけでは不十分であるという立場から,自己無撞着性を追及したシミュレーションを用いた研究をより一層進めなければならないだろう.観測とシミュレーションが両輪となって相互に連携し,磁気嵐現象の解明に寄与することを期する.

謝辞

本稿の執筆にあたり,名古屋大学太陽地球環境研究所の塩川和夫氏,三好由純氏に多くのコメントを頂きました.

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