科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金
審査部会理工系委員会における
2回目(第4年度次)中間評価について


赤道域は強い太陽放射のため積雲対流活動が地球上で最も活発であり、これに伴って励起される各種大気擾乱が地表近くから高度数百Kmに至る広い高度域に強い上下結合をもたらしている。これは地球規模の気候・環境変動に直結する現象でありながら、これまで観測の欠如または未蓄積のため多くの重要物理過程が未解明のまま残されてきた。本特定領域研究『赤道大気上下結合(Coupling Processes in the Equatorial Atmosphere: CPEA)』は、赤道域でも特にこの過程が顕著に発現する海洋大陸・赤道インドネシア域でその観測的解明を目指している。

 本特定領域研究CPEAは平成13年度から18年度までの6ヵ年計画として平成139月に始動した。現在4年度目にあって、当初計画に沿って順調に「1.機器開発フェーズ」を経て「2.個別研究フェーズ」を終えつつある。平成163月から5月に掛けては両フェーズの集大成と位置付けた第一次国際観測キャンペーン(CPEA)を成功裡に実施し、「3.総合研究フェーズ」へと漸次移行している。

 去る平成16922日に科学技術・学術審議会学術分科会科学研究費補助金審査部会理工系委員会において2回目(第4年度次)の中間評価を受けた。本冊子はその際、文部科学省に求められて平成16827日に提出した『平成16年度科学研究費補助金「特定領域研究」に係る研究経過等の報告書』の写しである。CPEAのこれまでの経過・成果、並びに今後の予定・見通しなどを概観しており、その全貌を知っていただくのに適当な資料と考え配布させていただく。

 いよいよCPEAに残された期間は2年余となった。来秋にはCPEA-IIの実施が予定されている。今後、班間の連携をより一層強め、領域全体が一丸となって研究を推進しなければならない。CPEAには「今後のグローバルな見地からの研究展開や新たな問題提起・新概念の提出」(上記委員会第2年度次中間評価の意見から)が期待されている。引き続き関係各方面のご理解とご支援をお願いしたい。

 なお審査結果は平成161022日、以下のとおり公表された。

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評価結果: A (現行のまま進行すればよい)

(中間評価に係る意見)当初計画に従って、機器開発フェーズに続き個別研究フェーズが行われ、そして本年からの総合研究フェーズへと順調に推移している。機器開発から始めて観測につなげるという方針はよく機能しており、またインドネシアとの長期的視野に立った協力を含めて国際研究協力体制も高く評価できる。フェーズの進展に伴って、今後は班間の総合けん研究を実効的に進めるために、これまで以上の強いリーダーシップが必要であろう。その上で、革新的な成果が数多く上げられることを期待したい。

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平成1611

特定領域研究(764)『赤道大気上下結合』

領域代表 深尾 昌一郎

京都大学生存圏研究所・教授