帰国留学生の研究指導に関する出張報告
津田 敏隆
1. 概要
(財)日本国際教育協会の依頼により、帰国留学生であるDr. Eddy Hermawanに対する研究指導のために平成14年7月30日〜8月8日にインドネシア共和国へ出張したので、概要を報告する。Eddy君はRASCに所属し、京都大学理学研究科の地球惑星科学専攻において、修士号ならびに博士号を取得した。2000年4月に帰国した後は、インドネシア航空宇宙庁(LAPAN)・気候モデル部門の研究員として、レーダー・気球による赤道大気の研究を行っている。
2. 訪問国での研究指導の状況・成果等
(1) ワークショップにおける特別講演: 7月31日にバンドンで開催されたワークショップにおいて、LAPAN長官のDr. Mahdi Kartasasmita および気象庁長官の Dr. Gunawan による基調講演に引き続き、特別講演を行った。大気の地上観測および衛星リモートセンシングによるデータの有用性について観測例を交えて説明した。Dr. Eddy Hermawan はこの会議の企画運営を担当するとともに、後述するRASS観測による大気擾乱の観測結果を発表した。会議にはLAPAN、気象庁およびバンドン工科大学等から約90名が参加し、活発な議論が行われた。
ワークショップで基調講演をする およびワークショップの風景。最前列が
LAPANのMahdi Kartasasmita長官。 LAPANのAdi Sadewo次官。
座長を務めるDr. Eddy Hermawan 特別講演を行う筆者
(2) LAPAN研究所訪問: 8月2日にバンドンにある気候大気物理研究所および宇宙物理学研究所において、2つの研究所を統括するDr. Adi Sadewo (LAPAN次官)、ならびにSri Kaloka 所長とSuratono所長を初めとする主要な研究所メンバーと、赤道大気科学に関する最新の研究動向、さらにこの分野における日本とインドネシアの今後の共同研究の進め方について議論した。その後、太陽活動と人工起源の環境変化が赤道大気に与える影響についてセミナーを行った。一方、Eddy君とはデータ解析およびEAR・RASS実験について打ち合わせた。
LAPANのKoto Tabang 観測所の風景(左)、および現地でデータ解析を行うDr .Eddy Hermawan (右)。左図では、手前にあるRASS用大型スピーカ(開口、約1mx2m)の調整を行っている。背景はEARの直径約100mの八木アンテナアレイ。
(3) EAR-RASS観測: 8月2日に西スマトラ州のブキチンギ市郊外にあるLAPANのKoto Tabang観測所に移動した。7月27日から8月5日に京大、島根大、観測フロンティア等が参加して実施された集中観測に参加した。この期間には、特にEARに音波発射装置を付加し、RASS(Radio Acoustic Sounding System)技術を用いて風速と気温を同時に優れた時間高度分解能で測定した。Eddy君はMUレーダー・RASS観測により博士学位論文をまとめており、EAR・RASS観測についてもLAPAN側の責任者となっている。RASS用の音波発射装置は既製品では対応するものがないために、大型スピーカ(写真参照)を独自に設計し、インドネシア内で製作を行った。なお、観測期間中に西スマトラ州のパダン市にあるアンダラス大学の学生が見学に訪れたので、観測装置および赤道大気観測の意義について、Eddy君が解説を行った。
パダン市にあるアンダラス大学の学生が ジャカルタのLAPAN本庁にて8月7日
8月6日にLAPANのKoto Tabang、 に研究指導の総括を行った。右からAdi
観測所を訪れた。左から2人目が Sadewo次官、Agus Nuryanto次官。左端
Dr. Hermawan、右から3人目が筆者。 が筆者。
(4) 研究指導の総括: ジャカルタにあるLAPAN本部を8月7日に訪問し、大気圏・宇宙物理研究担当のDr. Adi Sadewo、ならびに宇宙航空開発担当の次官であるDr. Agus Nuryantoに面会した。Adi Sadewo次官はEddy君が所属するバンドンにある研究所および観測所を統括している。一方、Agus Nuryanto次官は衛星による赤道大気観測の企画を推進している。両次官に今回の事業による研究指導内容、特にKoto Tabang観測所におけるレーダー観測の実地指導の模様を報告した。
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