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2020(令和2) 年度 生存圏科学 ミッション研究 6

更新日: 2020/08/04

研究課題

ウキクサ細胞壁多糖を利用したホウ素排水処理技術の開発

研究組織

 代表者 小林優(京都大学大学院農学研究科)
 共同研究者 梅澤俊明(京都大学生存圏研究所)
飛松裕基(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御
  • ミッション2 太陽エネルギー変換・高度利用
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

ホウ素は植物の必須元素であるが過剰量では生育を阻害する。また昆虫類に対しては明確に毒性が認められる。このため排水中のホウ素濃度は10 mg B L−1以下とすることが水質汚濁防止法で定められている。ホウ素化合物はガラス原料や釉薬、めっき溶剤などに使用される。また温泉にも比較的高濃度のホウ素化合物が含まれる。そのため窯業やめっき業、温泉旅館業など一部産業からの排水については前記基準値を超過するケースがあり、低コスト・低環境負荷の処理技術開発が求められている。

我々は、これまで植物のホウ素栄養について研究を行う中で、水生被子植物であるウキクサ属植物が体内に多量のホウ素を蓄積することに注目し、そのホウ素が細胞壁に結合して存在することを明らかにしてきた。さらに細胞壁におけるホウ素結合物質の同定を試み、以前よりアピオガラクツロナン(AG)として知られていた多糖、及びこれまで報告がないアピオキシラン様多糖(AX)をその候補物質として同定した。これら多糖は、ホウ酸とエステル結合しやすい五炭糖アピオースを主要構成糖とし、生体から抽出した状態でもホウ酸を結合する。そこで本研究では、これらウキクサ由来の多糖がホウ素含有排水の処理に利用可能か検討するため、多糖を固定化した担体の作成法の開発、そのホウ酸吸着性能の評価などを行い、応用の基盤となる情報を収集する。より具体的には、コウキクサ(Lemna minor)細胞壁から抽出精製したホウ素結合多糖AGまたはAXを、アミノ基で表面修飾したポリマービーズに共有結合させ、そのビーズを充填したホウ素除去カラムを作成する。そのための担体の高効率な作成法の確立、作成した担体のホウ素結合能評価および効率向上が本研究の目的である。

ウキクサ類(Lemnoidae)は増殖が速く、その乾物生産量は、最大で熱帯早生樹の数倍に相当する年間100トン ha−1に及ぶ。そのためウキクサには、通常の植物栽培には殆ど利用されない水圏でも生産可能なバイオマス資源としての有用性が期待されているが、実際には一部で家畜飼料等に利用される程度であり、ほぼ雑草としてのみ扱われているのが現状である。ウキクサを原料としてホウ素吸着剤のような有用物質が生産できれば、未利用生物資源の利活用につながる点でも有意義と考えられる。

小林優: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 図 1コウキクサ植物体

小林優: 2020(令和2)年度生存圏ミッション研究 図 2AXの推定構造
Api: D-アピオース、Xyl: D-ザイロース

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2020年8月4日作成

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