京都大学生存圏研究所
京都大学生存圏研究所

木質クギを用いた板壁の開発

森 拓郎、井上雅文、小松幸平

1. はじめに

 エコ住宅21プロジェクトの理念として、「質的に豊かで、真に健康的かつ長寿命で、耐震性能に優れた、21世紀に相応しい木造軸組構法住宅の構築とその基盤的技術を開発すること」がある。  この軸組構法住宅は、現在大壁構法に取って代わられてきている。この大壁構法を用いるためには、面材や梁材、柱材に及ぶまで乾燥が大変重要となる。そこで、伝統的な構法に目を向け昨年、本プロジェクトで小松先生が提案された構法1)(第一回発表、もしくは今回の小松先生の資料を参照)の壁部分を板壁とし、落とし込み板による耐力壁を考える。  この板壁であるが、壁の剛性を板と軸材、板同士の接合剛性によって発揮し、靭性を板の軸材へのめり込みおよび板同士の摩擦抵抗によって得ている。これらより、図1に示すような板壁をこのエコ住宅にて用いたいと考えた。

 図1に板壁同士の取り合いと柱と板壁の取り合いについて示している。板材同士は、切り欠きのある部分を重ね合わせ、木質接合具で固定する。また、柱と板壁については、切り込みを入れてそこに板を落とし込み、ここでも木質接合具を用いて固定する。これら接合具には、井上先生提案の木質クギ(今回は竹クギ)や小松先生提案の木質ダボ接合などが挙げられる。そこで、今年度は新規に開発した竹クギについて接合強度を調べるべく、多少の実験を行ったのでその結果について報告する。また、この接合具を用いた場合の板壁の耐力についても検討し、その結果も合わせて報告する。

2. 試験の概要

 2.1 試験体概要

 本プロジェクトでは国産材のスギを主要材料としており、それにならって主材はスギ集成材、側材はスギ板を用いている。試験体概要を図2に示す。接合具には、竹クギとCNくぎを用いている。CNくぎに関しては、作成した竹クギとほぼ同径のものを用いており、CNくぎの長さに竹クギを合わせている。

 今回は繊維方向については一種類、打ち込み長さ(側材厚さ)が二種類、そして、板壁同士の接合を考えた一種類の計3種類について二種類の接合具でおこなっている。一体につき、片側2本ずつの4本打ちとしたが、端距離およびくぎ間隔については、木質構造設計規準・同解説2)に定める値(端距離が15d、くぎ間隔が12dである)に若干満たないものとなっている。試験体数についてはバラバラであるが、試験体名は以下のようにして決めている。

 試験に用いるクギであるが、竹クギは、性状が丸ではなく四角のものを用いた。  そして長さは、竹クギMにおける一辺の長さとCN50の直径が、竹クギLとCN90がほぼ等しくなるように作成している。また、側材20mmで竹クギLとCN90を用いたものについては、CN90はもちろん90mmであるが竹クギでは50mmと少し短いものになっている。しかし、このことによる打ち込み長さについては、ほとんど問題がない結果となっている。

 2.2 試験方法

 本試験では、板同士、板と柱を接合する部分を対象として、薄板を接合した場合と厚板を接合した場合について一面せん断実験をおこなった。試験概要(右上図)と実験実験風景(右下写真)を示す。  変形は写真に示したように、主材と側材との相対変位を変位計を用いて両サイド測定し、荷重については試験機のロードセルを用いて連続的に測定した。荷重速度は、木質構造設計規準・同解説2)に示されている 2.5mm/min±25%の範囲内で本所所有のInstron1125で再現できる2mm/minでおこなった。

 くぎについては、先孔を2mmあけて打ち込みをおこなった。先孔は側材にのみあけており、主材には影響を及ぼさないようにしている。また、CNくぎは金槌で手打ちし、竹クギは一部自動釘打ち機で行ったが、精度が出せないため、井上先生考案の打ち込みガイドを用いておこなっている。まだ試作段階である竹クギには、CNくぎとは異なって、あたまが付いていないことも付記しておく。

3. 結果

 結果として、現段階では竹クギはCNくぎに及ばない部分が多い事が分かった。この多くの理由は、破壊性状の違いにあるといえる。写真2〜4にそれぞれのくぎにおける主な破壊の様子を示す。

 竹クギについての破壊では、高い初期剛性でPmax(最大荷重)をむかえ、その後竹クギがすべり(側材内部に入っていく:あたまがないためパンチングシェアーは起こすことができない)、ある程度の変形で写真2に示すような曲げ破壊が起こっている事がわかった。  つぎに、対象実験であるCNくぎでの破壊である。こちらは初期の剛性のまま最大荷重をむかえるのではなく、ある程度めりこみ(パンチングシェアー)を始めた時点で最大荷重に達する。その後の変形性能については、側材が割れるかどうかによって異なり、割れない場合にはかなりの変形まで許容することができた。  これらの結果より、竹クギに頭を作ることにより、めりこみへの抵抗要素を増加させることが必要であると考えられた。また、竹クギの形状が四角いため、打ち込みに方向性が生じてしまうことも問題である。よって、今後はくぎ自体の軸部の形状(丸が望ましいのでは)についても検討したい。

 本実験により得られた可能性として、竹クギは、高い剛性(図5)を発揮することができたため、剛性型の接合を目指すことによって利用することができると考えられる。その大きな理由として、今回提案している板壁では、層間変形で1/100rad.くらいまでを竹クギの耐力に依存し、その後の変形部分に関しては、真壁の特徴である壁材自体の枠材へのめりこみを利用して、耐力を維持していくことで実現可能と考えられるからである。

 今回提案した板壁に、竹クギを使用する場合、必要とされる変形性能は以下の様になる。(図参照)  { 階高(300cm)− 軸材厚さ(40cm) } / 板壁の幅(20cm) = 13枚

1/100rad.時の本壁の頂部変形は、30mmとなる。 板それぞれの変形は、  頂部の変形(30mm) / 板の枚数(13枚)= 2.3mm ただし、すべての変形が板壁同士の変形で起こった場合である。そのため、実際にくぎに必要な変形性能は2mmとなる。この変形であれば十分に本竹クギで対応できると考える。よって竹クギを用いた耐力壁の可能性は、大いにあると考える。

4. まとめ

 壁としての実験をおこなったわけではないが、今回の実験により、竹クギの性能が少し上がることによって耐力壁を構成することが可能ではないかとの見解を得ることができた。  今後は、竹クギの形状についても検討し、部分実験を重ね、壁実験をおこないたいと考える。

参考文献 1)エコ住宅21プロジェクトチーム:プロジェクト研究の理念・目標,低環境負荷・資源循環型木造エコ住宅に関する研究開発,2002.3 2)日本建築学会:木質構造設計規準・同解説−許容応力度・許容耐力設計法,pp.219-232,2002.10