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宇宙のプラズマから電波が生まれる瞬間の特定に成功(中村紗都子 研究員)

中村紗都子 生存圏研究所研究員、大村善治 同教授、小路真史 名古屋大学特任助教、三好由純 同准教授、加藤雄人 東北大学准教授、桂華邦裕 東京大学助教、笠原慧 同准教授らの研究グループは、日米の国際共同研究により、ジオスペース(高さ400kmから約10万kmの間の宇宙空間)のプラズマにおける新しい解析手法を開発し、NASAの科学衛星「THEMIS」の観測データを用いて、周波数1ヘルツ程度の電波が宇宙のプラズマの中から発生する瞬間の観測に成功しました。
本研究成果は、2017年9月14日付けで米国地球物理学連合の発行する論文速報誌「Geophysical Research Letters」電子版に掲載されました。

 概要

ジオスペースのプラズマからは、様々な電波が発生しており、プラズマの分布やエネルギーを変えてしまうことが知られています。特に周波数1ヘルツ程度の「電磁イオンサイクロトロン波動」と呼ばれる電波は、放射線(放射線帯の電子)の分布を変えたり、オーロラの発生に寄与したりすると考えられています。しかし、これまで、プラズマの中から電波が発生する瞬間は観測では捉えられていませんでした。
本研究グループは、電波とプラズマの位相関係からプラズマ分布の揺らぎを特定し、相互のエネルギー授受を求める新しい解析手法を開発しました。NASAの科学衛星THEMISのデータを、本手法を用いて詳細に分析することによって、電磁イオンサイクロトロン波動の発生する瞬間を特定することに成功しました。そして、電波が発生しているときには、その場所に存在するイオン群の中に、数秒間だけ存在する左右非対称な穴(ホール)が作り出されることを発見しました。また、この穴の存在によって、イオン群のエネルギーが電波を生み出していることを実証しました。
本研究グループが開発した手法は、今後、宇宙プラズマの中で発生している様々な種類の電波の分析に応用されていくことが考えられています。特に、昨年12月に打ち上げられたJAXAの科学衛星「あらせ」の観測データに適用することによって、明滅するオーロラを作り出している起源といわれる、周波数数千ヘルツの電波「ホイッスラー波動・コーラス」が生まれる様子が解明されることが期待されています。

(図上)地球周囲の宇宙空間であるジオスペースにおける自然電波発生の様子
(図下)左下はNASAの科学衛星THEMISで観測された磁場のスペクトルで、14:40前後に周波数が上昇する電波(電磁イオンサイクロトロン波動)が観測されている(白点線で強調)。中央はイオンと電波の共鳴の模式図。右上は電波発生の理論的に示唆される電波発生時のイオン群の分布で、図面右寄りに薄い密度の穴(青色で表現)が現れる。右下が、THEMISが捉えたイオンの穴で、右上の低密度領域に対応する。

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