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生存圏フォーラム39回連載コラム

鬼から電話がかかってくる!―これでピンときた方は、子育て真っ最中では? 最近、子育てに手を焼いている私は、このアプリの存在を知った時、世の中みんな苦労してるんだなぁ、と妙に納得した。要は、お化けに対する子供の恐怖心を利用して躾をしようという意図のツールである。こういうものが子育てに適切であるか否かはさておいて、私が不思議に思ったのは、お化けに対する恐怖心がいつの時代も不変であるということである。お化けが怖いのは子供だけではない。いま、これを読んでいるあなたが、クマやイノシシが出没すると知られている山の中で一人ポツンと取り残されたとしよう。日も暮れてしまい、あなたには明かりもないし、携帯電話もない。辺りは漆黒の闇である。すると突然、ガサガサと不穏な音が聞こえてくるではないか! しかも、非常に不運なことに、どうやらあなたの方に向かって近づいてきている!・・・さて、どうだろうか? 個人差はあっても、そんな状況に置かれたら大人だって恐怖感を抱くに違いない、と私は思う。人間は、得体の知れないものや、科学とか人生経験とかでは理解できないものを根本的に怖いと感じるのではないかと思う。子供(も大人も)がお化けを怖いと感じるのは、怪談話を脈々と受け継いできたからではなく、人間の本質なのではないだろうか。地震、雷、火事、おやじ、という言葉がある。おやじはさておき、古くから人間は、天変地異を恐れてきた。そして、必要な対策をとるという努力もしてきた。私はいま、気候変動を招くことが懸念されるグローバルな“温暖化”のプロセス解明を、研究のメインテーマとしている。より確からしく将来の気候変動が予測できるようになるよう、基礎的な観測・実験データをコツコツと積み上げようとしている。いまを生きる世代だけでなく、子子孫孫が直面し続けるかもしれない気候変動の問題に対して、それを漠とした脅威とみなすのではなく、適切な対処を可能にするためには、今以て地道なデータの蓄積が必要であると考えている。そうだ、わが子よ、あなたたちの父は、お化け退治をしているのだぞ(と、Youtubeでなまはげの映像を見せながら子供を泣かす本人が偉そうに言ってみる)。

(生存圏フォーラム会員 京都大学准教授 K.T.)