Research Institute for Sustainable Humanosphere

ミッション5-1「人の健康・環境調和」
平成28年度の活動

[バイオマスの生体防御物質]

課題1-1 木竹酢液の抗ウイルス活性物質の探索(渡辺隆司)

未利用バイオマスから薬効成分・生理活性物質を生産し、人の健康や安全な生活に貢献することを目的とし、木酢液、竹酢液の抗ウイルス活性成分の探索研究をウイルス・再生医科学研究所などと共同実施している。平成28年度は、木酢液に含まれる多様なフェノール誘導体の構造を決定するとともに抗ウイルス活性を評価し、芳香環につく置換基の抗ウイルス活性に与える影響を明らかにした。また、中国の蘭州獣医学研究所と木酢液成分の口蹄疫ウイルスに対する抗ウイルス活性に関する共同研究を開始した。

木竹酢液を含む植物由来物質の生理活性に関する国際ワークショップを平成29年3月6日に宇治で開催する。中国の蘭州獣医学研究所、南京農業大学、東京農工大学などから、家畜ウイルス、家畜内分泌学などの専門家を招聘し、植物由来物質の生理活性の共同研究を議論する。

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木酢液の抗ウイルス活性に関する国際共同研究を実施している蘭州獣医学研究所

課題1-2 生理活性物質の生産機構と生物工学(矢崎一史)

医薬品として利用される植物の二次代謝産物には、抗癌剤のビンクリスチンやパクリタキセルのように、高い脂溶性を示す化合物が多いが、その分泌機構は大部分が未解明である。本研究では、ムラサキのシコニン生産系をモデルに、その機構解明に挑んでいる。

28年度は、ムラサキの培養毛状根を用いて、共焦点レーザー顕微鏡によるモニタリング系を構築した。また、阻害剤実験により分泌過程を解析したところ、小胞輸送系と共通のマシナリーの関与が示唆された。

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研究成果

Tatsumi, K., et al., Characterization of shikonin derivative secretion in Lithospermum erythrorhizon hairy roots as a model of lipid-soluble metabolite secretion from plants, Frontiers Plant Sci. 7, Article 1066, 2016.

課題1-3 抗腫瘍性リグナンの生物生産に向けた単位反応の構築(梅澤俊明)

ポドフィロトキシンは抗腫瘍性を示す化合物であり、抗ガン剤の原料をして注目されている。しかし、同化合物を産生する植物が希少であるため、その生物生産系の確立が望まれている。将来的なポドフィロトキシンの安定供給に向け、本研究では、生物生産系確立に必須である生合成経路の各反応段階に関わる各酵素遺伝子の同定を行なっている。 現在、セリ科のシャクやヒノキ科のアオモリヒバを用いて、リグナン構造中の水酸基をメチル化する酵素(O-メチルトランスフェラーゼ)をコードする遺伝子の単離を試みている。

成果発表

  1. 熊谷真聡、山村正臣、小埜栄一郎、白石慧、梅澤俊明「シャクにおける5-O-methylthujaplicatin O-methyltransferase遺伝子の同定」 第34回日本植物細胞分子生物学会(上田)大会.
  2. 熊谷真聡、山村正臣、小埜栄一郎、白石慧、梅澤俊明「シャクにおける抗腫瘍性リグナン生合成遺伝子の探索」第67回日本木材学会大会(福岡)(予定)

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抗腫瘍性リグナン推定生合成経路

課題1-4 昆虫モデルによるバイオマス(植物・微生物)の生理活性機構調査 
―グルーミング行動を利用した遺伝子資源探索ー(柳川綾)

グルーミングは、動物が自身あるいは相互に体表をなめあうなどの接触行動を指す。ヒトでは貧乏ゆすりなども含まれ、ストレス性心疾患から生じる異常行動に関わる。本課題では、昆虫をモデルにグルーミング機構を調査し、関連遺伝子や植物・微生物由来生理活性物質を探索することで、病気による異常行動の緩和など、医学的な治療に貢献する。(共同研究者: Coby Schal, Trudy Mackay, Ayako Katsumata, Akihiko Yamamoto, Wen Huang)

28年度は、関連遺伝子同定を目的とした同型遺伝子キイロショウジョウバエ203系統間の自発的グルーミング行動のばらつきを分析したほか、招待講演者として、the JSCPB symposium, “Environmental Sensing and Animal Behavior”, 東京, (2016年6月)において、研究成果の一部を紹介した。また、2017年3月には、次世代支援から派遣旅費を得て、ノースキャロライナ州立大学にて、主に共同研究者間の情報交換を目的とした研究集会を行う予定である。

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共同研究先のノースキャロライナ州立大学と実験作業

成果発表

Yanagawa, A., French, A., Hata, T., Yoshimura, T., Marion-Poll, F. Decapitated test to see the microbe induced grooming response, the JSCPB symposium, “Environmental Sensing and Animal Behavior”, June 2016, Tokyo, Japan.(Invited lecture)

課題2 電磁波の生体影響(宮越順二)

我々の生活環境には多種多様な非電離放射線の電磁波が存在し、これら電磁波のばく露による人の健康への影響について、国際的な議論が高まっている。このような背景から、細胞や遺伝子レベルの実験により、電磁波ばく露の影響評価研究を行っている。具体的には、

  • 国際的な普及が見込まれる超高周波帯(ミリ波・テラヘルツ)の生体影響評価
  • 生活環境におけるワイヤレス電力伝送システムによる生体の安全性評価

などである。

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研究集会

  • Bioelectromagnetic Society (BioEM)
  • URSI-GA
  • AP-RASC など

成果発表

  1. S. Koyama, E. Narita, Y. Shimizu, T. Shiina, M. Taki, N. Shinohara and J. Miyakoshi, “Twenty Four-Hour Exposure to a 0.12 THz Electromagnetic Field Does Not Affect the Genotoxicity, Morphological Changes, or Expression of Heat Shock Protein in HCE-T Cells”, Int. J. Environ. Res. Public Health, 13, 793; doi:10.3390/ijerph13080793, 2016.
  2. S. Koyama, E. Narita, Y. Shimizu, Y. Suzuki, T. Shiina, M. Taki, N. Shinohara, and J. Miyakoshi, “Effects of Long-Term Exposure to 60 GHz Millimeter-Wavelength Radiation on the Genotoxicity and Heat Shock Protein (Hsp) Expression of Cells Derived from Human Eye”, Int. J. Environ. Res. Public Health, 13, 802; doi:10.3390/ijerph13080802, 2016.
  3. K. Mizuno, N. Shinohara, and J. Miyakoshi, “In vitro evaluation of genotoxic effects under magnetic resonant coupling wireless power transfer”, Int. J. Environ. Res. Public Health, 12, 3853-63. doi: 10.3390/ijerph120403853, 2015.
  4. K. Mizuno, E. Narita, M. Yamada, N. Shinohara, and J. Miyakoshi, “ELF magnetic fields do not affect cell survival and DNA damage induced by ultraviolet B”, Bioelectromagnetics, 35, 108-15. doi: 10.1002/bem.21821. 2014.
  5. Junji Miyakoshi, “Cellular and Molecular Responses to Radio-Frequency Electromagnetic Fields”, Proc. IEEE, Vol.101, 2013.
  6. 宮越順二 特設記事「電波と健康のお話」RFワールド No. 35, p. 107-115. http://www.rf-world.jp/bn/RFW35/RFW35A.shtml. 2016.
  7. 小山眞、宮越順二 「高周波電磁界による細胞応答研究の動向」保健医療科学64(6), p.547-554. 2015.

本研究に関するより詳しい説明はホームページをご覧ください。

Homepage URL:  http://space.rish.kyoto-u.ac.jp/people/miyakoshi/

課題3 大気質の安心・安全―人間生活圏を取り巻く大気の微量物質の動態把握―(高橋けんし,矢吹正教)

大気微量成分(ガスおよび粒子状物質)は、ローカルからグローバルスケールの大気環境への影響や、ヒトへの健康影響も懸念される。本研究では、人間生活圏および森林圏に近い大気の化学的動態の変動に着目し、大気微量成分の時空間分布を精細に描写する新しい大気計測手法を開拓することを目指している。

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野外観測や室内実験による大気微量成分の動態把握

成果発表

M. Yabuki, M. Matsuda, T. Nakamura, T. Hayashi and T. Tsuda, A scanning Raman lidar for observing the spatio-temporal distribution of water vapor, J. Atmos. and Solar-Terres. Phys., 150, 21–30, 2016.

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