ご挨拶

われわれの研究室では、木質資源を核とした自然生態系、都市あるいは住宅生態系における木質共生系に関する基礎的研究を基に、生存圏における未来型資源循環システムの構築を目指す研究を進めています。

京都議定書は2008年から5年間の温室効果ガスの削減目標を定め、そこに森林によるCO2吸収量の算入を認めました。一方、新築ならびに既築の住宅に利用されている木材には、莫大な量の炭素が固定されています。しかしこの「利用された木材」は生長して炭素を固定することはできませんので、一度固定された炭素はできるだけ放出を抑えることが大切になってきます。木材をできるだけ利用する、そして劣化を防ぎ耐久性を向上させて長く使う、これが木材側の視点でみた地球温暖化防止の有力な方策です。

われわれの研究室は、木質資源を長く使うことを目標に、木材、木質材料および木質住宅の耐久性向上、木材腐朽菌およびシロアリの生理・生態と菌害・虫害の総合防除、木材への薬剤注入性向上技術の開発、劣化診断法と保守管理技術の開発等の研究のほか、木材劣化生物の機能を利用した環境修復やエネルギー開発の研究にも取り組んでいます。 さらに、高吸着性、高強度、高弾性、高導電性、熱電変換特性、耐熱性などの高度な機能性が注目されているウッドカーボンのナノ構造解析と新たな機能開発にも挑戦しています。

居住圏環境共生分野教授 大村和香子