生活・森林圏シミュレーションフィールド

シロアリによる木質資源への生態的・経済的・環境的なかかわりについて、鹿児島県吹上町の京都大学シロアリ試験地をベースに、東アジア諸国の研究機関とネットワークを構築してフイールドでの調査研究を行っています。

RISHのHP

居住圏劣化生物飼育室
シロアリ飼育室

シロアリは基本的に熱帯性の昆虫で、1年間を通して実験を行うためには一定の温湿度環境でコロニ-を飼育する必要があります。そのために、劣化制御分野では実験室の地下にシロアリ飼育室を設置しています。常時3個以上のイエシロアリのコロニ-を飼育することにより、年間30万~50万頭のシロアリを実験に供することができます。本設備は国内の研究機関では最も大規模なものです。

腐朽実験室

シロアリなどの昆虫類とともに木材腐朽菌類やいわゆるカビなどの微生物も激しい劣化を引き起こします。こういった微生物を用いた実験 にも、温湿度が一定に保たれた部屋が必要です。そのために劣化制御分野では、微生物専用の大型恒温恒湿室を設置し、種々の薬剤の防腐・防カビ性能試験や木 材・木質材料の耐朽性に関する実験を行っています。

ヒラタキクイムシ実験室

熱帯産広葉樹材やナラ類などの重要な害虫であるヒラタキクイムシは、近年その被害が増加傾向にあります。その理由としては、住宅内の 温暖化や合板の低ホルムアルデヒド化などが考えられています。劣化制御分野では、薬剤や材料の防虫性能評価を評価するためにヒラタキクイムシ専用の恒温恒 湿室を設置し、実験を行っています。現在、ヒラタキクイムシを経常的に人工飼育し実験に供している国内では唯一の設備です。

エコ住宅

2006年に建設された「低環境負荷型・資源循環型木材エコ住宅」、通称“エコ住宅”を用い、木材腐朽菌やシロアリといった木材劣化生物の環境調和型防除システム(“エコ・コントロール”)の開発を目指した取り組みを行っています。

“エコ住宅”に設定した2種の床下工法、土壌あらわし工法とベタ基礎工法における菌類相の変化を追跡するとともに、シロアリの巣を床下に移設し、住宅内での食害生態の詳細な解析や無薬剤防蟻工法の実大試験を実施しています。

有機元素分析(炭素窒素同時分析法)

本分野では、木材や木質炭素化物中の炭素、水素、酸素、窒素の定量分析を行うために、元素分析を行っています。

元素分析では、微量天秤で精密に秤りとった試料(2mg程度)を石英管中で燃焼させ、発生した水と二酸化炭素、窒素ガスをそれぞれの 吸収管に吸収させて、吸収管の増量を秤量してC、H、Nの含有量を求めます。他にも、カラムを換えることで酸素分析や硫黄ハロゲン分析を行うことが可能です。

ICP(Inductively Coupled Plasma)

高周波誘導によって励起されたアルゴンプラズマ中に溶液試料を噴霧すると、原子は励起されて原子スペクトル線を発光すると同時に、その一部はイオン化されます。ICPによる光を分析するのがICP発光分析で、イオンを計測するのがICP質量分析です。

ICPでは、希ガス、ハロゲン、窒素、酸素を除くほとんどの元素についてppm~ppbレベルの高感度分析が可能です。また、高速で定性分析が可能であり、多元素を短時間で分析することが可能なだけでなく、同位体比の測定も可能です。

液体クロマトグラフィー
ガスクロマトグラフ

ガスクロマトグラフは、微量な化学成分の定量的な分析を行うための装置です。

溶媒に溶かされた複数の化学成分は、吸着剤を入れた長い管(カラム)の中を、ガスクロマトグラフでは気体とともに移動することで分離します。この分離した物質を燃焼させることによって、定量的に分析することになります。

当分野では、木材保存薬剤、木材中の遊離糖、木材燃焼ガスおよび木材劣化生物の生成ガスなどの分析にこれらの装置を用いています。

蛍光X線分析法(XRF)

本分野では、木材やCCA処理木材中に含まれる微量元素を定量的に分析するために、蛍光X線(XRF)分析を行っ ています。

物質を構成する原子はそれぞれ固有の電子準位を持っています。このような物質にX線を照射すると、物質から原子特有の性質をもつ特性 X線が発生します。この特性X線を蛍光X線と総称します。このX線を用いて物質中に存在する原子の種類および量を解析することを蛍光X線分析法といいま す。F以上の元素の定性、定量分析が可能で、液体と固体いずれの試料の分析が可能です。

顕微ラマン分光法

本分野では、木質炭素化物やSiC成型物のキャラクタリゼーションを行うために、顕微ラマン分光法を用いています。

物質に単色光を照射した時、入射光とは異なる振動数の光が散乱されます。これをラマン散乱と呼びます。ラマン散乱の散乱光と入射光の 振動数の差は、試料 の分子振動の振動数と等しいことから、ラマン散乱の振動数を測定することで物質の組成、結晶性、配向性などの構造評価が可能になります。分析深さは、表層 から50nm程度なので、厳密には表面分析法に分類されます。本研究分野のラマン分光法装置は、顕微装置を備えており、最小直径1μmの範囲をピンポイン トで分析することが可能です。

ラマン分光法は、炭素の構造変化を敏感に検知することが可能であることから、炭素材料分野では欠かすことのできない分析装置として広 く用いられていま す。本研究分野においても、木質炭素化物の炭素化過程および黒鉛化過程における炭素六角網面の発達挙動の解析やSiCの結晶構造の解析に用いています。

走査型電子顕微鏡(SEM)+エネルギー分散型X線分光法(EDAX)

本分野では、試料形状の観察および特定部位の元素分析、さらには元素マッピングを行うために、エネルギー分散型X線分光法 (EDAX)を備えた走査型電子顕微鏡(SEM)を用いています。

SEMは、数nmに細く絞った電子線を順次試料上に走査照射し、各点状領域から発生する二次電子を次々に検出して、ブラウン管上にそ の信号の分布像を写し、試料の形状観察のために数10倍~10万倍程度の拡大倍率が必要な場合に用いられる電子顕微鏡です。試料は、導電性が必要とされる ために、木材は金蒸着膜でコートして観察を行います。

SEM観察において、試料に電子線を照射した際には、二次電子だけでなく様々な信号が発生します。その中で、発生する特性X線をエネ ルギー分散型分光器を用いてスペクトルとして検出するのがEDAXです。そのため、EDAXでは、SEM観察している微小領域の構成元素および元素分布に ついての情報を得ることができます。

レーザーフラッシュ装置

レーザーフラッシュにより試料表面を均一に加熱した直後の裏面の温度変化から熱拡散率を計算により測定する方法をいいます。この方法では小さく緻密な試料を短時間で測定でき、解析方法がシンプルですので、熱拡散率をもとめる標準的な方法として広く用いられています。

小角広角X線回折装置

小角X線散乱とは 1nm-100nm程度の大きさの粒子、またはこの程度の大きさの密度不均一領域を内部に含む物体をX線が通過するとき、入射角に対して極めて小さい角度領域に生じる散漫な散乱をいいます(一般的に、散乱角2θに対して0-5°ぐらいを指す場合が多い)。本方法で生じた散乱パターンを適切に解析することにより、散乱体の大きさ、形状等に関する情報を得ることができます。

炭化炉

横型の電気炉で1000℃ぐらいまでの加熱が可能です。窒素ガスやアルゴンガスを流しながら、木材を加熱処理することによって水蒸気や低分子化合物が除かれ、炭素の比率が大きくなります。木材を高温で焼結処理を行う場合は、このような予備炭化が必要となります。

微量水素分析装置

微量水素分析装置は、水素とメタン、特に微量の水素を高精度で測定できるように設計された特別な装置です。
試料ガスは、空気とともに活性炭カラムに送られ、水素とメタンに分離された後半導体センサーで検出されます。これによって、0.5ppm~500ppmの水素が精度良く定量されることになります。
当分野では、シロアリが発生するバイオガスの効率的利用を目指して、シロアリやその共生微生物が生成する水素とメタンの分析に本装置を使用しています。