RESEARCH

研究室では、繊維状その他の高分子材料を機能化するコア技術として、超臨界流体と放射線を利用しています。超臨界流体は各物質固有の臨界点を超えた状態の物体で、気体・液体・固体とは異なる性質を持っています。気体のように早く移動することができながら、液体のようにものを運ぶことができる流体です。主に、活性の低い超臨界二酸化炭素を従来の水や有機溶剤に代わる媒体として使っています。また、高エネルギーを有する放射線の中で、透過力の高いγ線、透過力は中程度だが活性種の生成が多い電子線、局所処理が可能で選定イオンの効果が期待できるイオンビームを中心に、有機材料の改良について研究しています。

セルロース系材料のイオンビーム照射によるDLC化

これまでに、ポリビニルピロリドン(PVP)薄膜にアルゴンや窒素イオンを照射すると、条件によりPVPが炭素化しダイヤモンドライクカーボン(DLC)が生成することを報告しました。特にDLC内のsp2成分とsp3成分比により、導電性と硬度をコントロールできることは大変興味深く、これを木材の表面に応用することで、硬質で導電性を持つ木材の開発を進めています。

超臨界流体を用いた木質材料の軽量化

超臨界流体を利用した樹脂の発泡には、MuCell®で知られる液相発泡が広く研究されています。従来の化学発泡に比べてセルの大きさが小さく、気泡を含まないスキン層と気泡を含むコア層から成るサンドイッチ構造をとるため、強度低下が少なく寸法安定性が高いのが特徴です。一方、予備成型した樹脂を対象とする固相発泡では、気泡の粗大化が避けられてより微細気泡が得られ、スキン層がなくとも高い強度を持ちながら高い断熱性などの機能を発揮します。我々は、超臨界二酸化炭素を用いた固相発泡による樹脂や化学繊維の発泡についての研究を進めていますが、今後は軽量化を目的に対象を木材に広げて研究を続けます。

研究課題

2017 セルロース系材料のイオンビーム照射によるDLC化
放射線によるセルロース系バイオマスの糖化
超臨界流体を用いた木質材料の軽量化
セルロース系ナノ複合材料の調製
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