Research Institute for Sustainable Humanosphere

木材の流動成形における高度制御型化学処理手法の開発
Development of techniques for highly controlled chemical treatment in wood flow forming

氏名 田中聡一
共同研究者 金山公三
採択年 2017(平成29)年度

木質資源は人間がわずかなエネルギーを投じるだけで材料として利用できるが、それが十分に進んでいるとは言い難い。これは木質系材料が、大量の材料が使用される産業界の要求に応えられていないためである。産業界では高い安定性、精度や正確さをもつ材料が求められる。そのために材料開発では、一般的に素材の構成要素を小さくしてそれを再構築する。一方で、構成要素を小さくするほど加工に大きなエネルギーが必要なので、小さい構成要素にすることは環境負荷という観点からは好ましくない。木質系材料の要素となる構造は、主に塊の木材、組織構造、細胞構造、微細構造に分類できる。特に、利用促進と低環境負荷を両立させるためは細胞構造を生かした材料開発が必要である。それは細胞構造が、それ以上細かくするエネルギーを導入せずとも、緻密で強靭な階層構造を持ち、優れた機械特性や物性を有するためである。

近年、細胞構造を効果的に利用した加工技術である「流動成形技術」が注目を集めている。塊状の木材を流動させて自由に形状付与をすることができる成形技術である。この成形の過程では、温度・圧力を制御して細胞と細胞の間を柔らかくすることによって細胞が移動し、最初隣にいた細胞とは別の細胞と再結合する。従って流動成形技術では、1つ1つの木材細胞の破壊を抑えつつも自由度の高い木材の加工ができるので、「細胞構造を生かした材料設計」が可能である。

流動成形技術で安定した成形体を得るためには、成形前に素材となる木材に化学物質を導入する必要がある(図 1)。それは、木材の細胞壁の中にある不安定構造が水分を収脱着したり、分解の起点となったりするのを防ぐことで、成形体の変形、劣化、および分解を防ぐためである。しかしながら現状では、化学処理にムラがあり、処理された細胞とされていない細胞が存在し(巨視的処理ムラ)、さらに細胞壁中にも処理されて安定化された箇所と処理されていない不安定な箇所が存在する(微視的処理ムラ)。そのために、成形体には、環境次第で変色する、寸法が不安定である、強度がばらつくという問題が生じている。そこで、巨視的および微視的な処理ムラを解消するために、それぞれ「細胞1つ1つを物質溶液で充填する手法の開発」および「不安定領域を物質で充填する手法の開発」というテーマに取り組み、これらの問題の解決を目指す。同問題は、本質的にはすべての木質系材料に共通しており、その解決によって木質系材料全般の信頼性を向上させることができ、木質資源の利用拡大にも繋がるものと期待される。

前年度は、後者のテーマについて、物質溶液を含浸した木材の養生工程(溶媒をゆっくり蒸発させる工程)において物質が細胞内腔から細胞壁へ拡散する現象に着目し、養生の温度と湿度を適切に選べば、細胞壁中の物質量を増大させることができ、不安定領域を低減することができることが明らかとなった。

図 1

ページ先頭へもどる
2017年4月19日作成

一つ前のページへもどる