Research Institute for Sustainable Humanosphere

第191回定例オープンセミナー資料

開催日時 2015/01/21(水)
題目 北海道の地域気候に対する土地利用改変の影響
Impacts of land-use modification on the regional climate change in Hokkaido, Japan
関連ミッション ミッション 1 (環境計測・地球再生)

発表者

杉本志織 (首都大学東京 都市環境科学研究科)

要旨

人為的な土地利用改変は、陸面でのエネルギー収支や地表面粗度の変化を通じて地域気候に影響を及ぼす。数値実験によると、土地利用改変に伴う大気―陸面間の応答は気候帯によって異なることが指摘されており、各地域に特化した研究が求められている。

北海道では、19 世紀後半以降、森林から農地または都市への開拓が進められてきた(図 1)。改変の歴史が比較的浅いため、土地利用変遷の記録が現存するが、これは数値実験の入力値として用いることができる。また、1880 年代以降、限られた地点ではあるものの、気象庁により継続的な地上観測が実施されてきた。この観測データは、長期の気候変動に対する土地利用改変の影響を評価するために有用である。そこで本研究では、領域気候モデルを用いて、北海道を対象とした数値実験を実施し、都市の形成や農地開拓が寒冷地域の気候に及ぼす影響について調べた。

森林から都市へと改変された地域では、最高気温よりも最低気温のほうが、夏季よりも冬季のほうが大きく昇温した。この昇温には、ボーエン比の変化と合わせて、大気境界層構造(日中の混合層の発達高度や夜間の安定成層の発達)の変化が大きく寄与していることが示唆された。都市域での昇温に見られた季節性および日周性は観測データとも整合した。

森林から農地へ改変された地域では、特に冬季の気温や降水を変化させることが示唆された。農地化のための森林伐採は、積雪期における地表面アルベドの増加と正味放射量の減少をもたらした。これに伴い、気温は低下し降水量は減少した。一方、森林が残されている山岳域では、風上地域での森林伐採が地表面粗度の減少と風速の強化をもたらしたため、山岳斜面での地形性上昇流が強化され、結果として降水量が有意に増加した。大気境界層構造や積雪期の地表面状態の変化は、寒冷地域特有のものであり、土地利用改変が北海道の地域気候にもたらす特徴的な影響をとらえることができたと考える。

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図 1 数値実験に利用した10 kmメッシュの北海道の土地利用分布図;(a)1850年および(b)1985年。実験には、Nishikawa et al. (2006)を基に作成されたデジタルデータを用いた。図の縦軸と横軸の数値は、数値実験における格子点番号。

参考文献

Nishikawa, O., Y. Himiyama, T. Arai, I. Ota, S. Kubo, T. Tamura, M. Nogami, Y. Murayama, and T. Yorifuji (2006), Atlas –Environmental change over Japan–, Asakura-syoten, Japan. (In Japanese)

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