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第283回生存圏シンポジウム
名古屋大学太陽地球環境研究所共同研究集会
第6回ERGサイエンス会議
放射線帯における波動粒子相互作用について: ERG/S-WPIA観測戦略の立案
衛星-連携地上観測の科学戦略の立案に向けて

日時・場所

日時: 2015(平成27年)3月13日 (金) 10:00–17:00
場所: 名古屋大学エコトピア科学研究所8F会議室
主催者: 三好由純(名古屋大学)、小嶋浩嗣(京都大学)
申請代表者: 三好由純 (名古屋大学)
所内担当者: 小嶋浩嗣 (京都大学生存圏研究所宇宙圏航行システム工学分野)

関連ミッション

関連分野

宇宙プラズマ、宇宙天気。

目的と具体的な内容

本研究集会では、2016 年に打ち上げ予定のジオスペース探査衛星 ERG と連携する地上観測によって放射線帯電子の加速およびプラズマ波動素過程を解明するための科学戦略の検討を行った。議論では、ERG 衛星による詳細なプラズマ波動やプラズマ・粒子の分布と、地上に多点展開されている磁場やレーダー、アンテナによる電磁波観測をどのように組み合わせるかについての議論が行われた。特に、ERG 衛星の特徴の一つである S-WPIA(ソフトウェア型波動粒子相互作用解析装置)によるコーラス波動と電子のエネルギー交換過程の観測を実施している際に、どのように地上観測を組み合わせるのが効果的かについての議論が行われた。議論では、磁力線を介して ERG 衛星とつながっている地上の観測点において、高速サンプリングによる VLF 波動観測、および波動粒子相互作用の結果、引き起こされる数 keV から MeV にわたる降り込み電子を光学、電波、X線で総合的に観測することで、ERG 衛星が観測している波動粒子相互作用を包括的に理解し、どのように磁気圏の電子の分布の変化を引き起こしているかの推定が可能であることが示され、今後より具体的な観測戦略を立案することが合意された。

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

地球周辺の宇宙空間には放射線帯と呼ばれる高エネルギー粒子捕捉帯があり、磁気嵐等に呼応して活発な消長を示している。この放射線帯の粒子は、人工衛星の帯電を引き起こしたり、宇宙飛行士の被ばくを引き起こすなど、人類が宇宙圏を安全に利用していく際に大きな影響を及ぼす。したがって、放射線帯粒子の消長メカニズムを理解し、その変動を予測することは、宇宙天気および宇宙天気予報の最重要課題の一つとされている。

本研究集会では、この放射線帯の消長を引き起こすメカニズムの一つである磁気圏プラズマ波動の動態を理解するために、2016 年に我が国によって打ち上げられるジオスペース探査(ERG)衛星に搭載される S-WPIA によるプラズマ波動の詳細観測の活用と、地上観測との組み合わせることによる磁気圏の粒子環境の包括的な理解についての議論が行われた。本研究集会で行われた議論は、放射線帯電子の消長メカニズムを理解するために重要であり、ERG 衛星打ち上げ後に迅速に観測と解析を行い科学成果を拡大していくことに資するものであるとともに、放射線帯電子の消長メカニズムの解明を通して、宇宙生存圏の理解と安全な利用に貢献するものである。

プログラム

10:00–10:05はじめに [篠原、三好]
    今回のサイエンス会議のねらい/事務連絡
10:05–10:15衛星開発進捗 [篠原、高島]
10:15–10:25連携地上観測班報告とイントロ [塩川、三好]
    ERGプロジェクト主科学課題に向けた衛星-地上連携
 
地上-衛星観測計画の立案に向けての提案
(科学課題-I: 波動粒子相互作用)
・降り込み電子観測による、放射線帯消失過程
・波動発生領域の広がりの推定
10:25–10:45気球によるMeV電子降り込み観測 [京大・谷森他]
    放射線帯電子消失(空間領域・時間・エネルギースペクトルの把握)
10:45–11:05LF標準電波/AVONネットワークによる降下電子観測 [千葉大・大矢他]
    放射線帯電子消失(空間領域・時間)
11:05–11:25極地研のリオメータ観測とERG衛星観測との連携 [NIPR・田中・山岸他]
    放射線帯・プラズマシート電子消失(空間領域・時間)
11:25–11:45昭和基地VLF観測がめざすサイエンス [NIPR・岡田他]
    電子加速・散乱(空間領域・時間、非線形過程)
 
11:45–13:00昼食休憩
 
13:00–13:20電子オーロラについての主科学課題とそれに向けた観測計画 [名大・塩川他]
13:20–13:40EMIC波動・プロトンオーロラについての主科学課題とそれに向けた観測計画 [JAXA・野村他]
    電子およびリングカレントイオン散乱(空間領域・時間、非線形過程)
 
(科学課題-II: プラズマ圏)
・波動粒子相互作用の背景媒質の理解
・内部磁気圏の熱的プラズマの組成・分布
13:40–14:00地上磁場-衛星観測によるプラズマ圏診断 [北九州高専・才田他]
    背景プラズマ密度分布のモニター(空間分布)
 
(科学課題-III: 放射線帯電子輸送)
・放射線帯電子の輸送過程解明のためのグローバルなULF波動分布
14:00–14:20地上磁場・レーダーによるPc5観測 [NICT・坂口他]
    Pc5波動の空間分布、時間、モード数
14:20–14:30モデリング・シミュレーション班報告 [関]
サイエンスセンター報告 [三好]
 
大型地上観測プロジェクト/各研究機関と連携
14:30–14:50MAGDAS/210MM [九大・吉川(代読)]
14:50–15:10NICTにおけるジオスペース観測の今後とERG衛星ミッションとの連携 [NICT・石井]
15:10–15:30次期南極観測計画におけるERG衛星観測との連携について [NIPR・門倉・行松他]
 
15:30–15:40休憩
 
検討チーム報告
15:40–16:00ERG-SD共同観測検討タスクチーム報告 [名大・堀他]
16:00–16:20ERG-EISCAT連携観測計画 [NIPR・小川(代読)]
16:20–16:40地上-ロケット-ERG衛星による脈動オーロラ観測計画 [電通大・細川他]
 
16:40–17:00まとめの議論
    ERG打ち上げに向けた準備計画