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第174回定例オープンセミナー資料

2013年11月20日

題目

大型イネ科植物のリグノセルロースの性状について
Characteristics of lignocellulose of large-size gramineous plants

発表者

山村正臣 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)

関連ミッション

  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)
  • ミッション 2 (太陽エネルギー変換・利用)
  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

現在、バイオ燃料生産の原料として注目されている大型イネ科植物は、非可食性、環境適応性など様々な特徴を有しているが、その中でも特筆すべきはそのバイオマス生産性の高さである。例えば、熱帯で栽培されているソルガムの年間生産量は乾物重で 100 t/ha 以上にも達し、熱帯樹木の 10 倍以上のバイオマス量を生産する。また、日本においても西南日本ではエリアンサス、東北日本ではミスカンサス(ススキ)といった大型イネ科植物が栽培可能であり、乾物重で年間 20–50 t/ha のバイオマスを生産可能である。したがって、この驚異的なバイオマス生産性を有効利用することが喫緊の課題である。

近年、大型イネ科植物の 1 種であるエリアンサスの木質について詳細に化学分析が行われ、エリアンサスの特定の部位及び器官において針葉樹に匹敵するほど多くのリグニンを蓄積していることが明らかとなった。一般に、リグニンはバイオ燃料生産における酵素糖化の工程に対して阻害的に働き、またリグニン量が多いほど酵素糖化性が悪くなることが知られている。イネ科植物は脱リグニンが比較的容易であるものの、その処理にかかるコストや手間を考慮した場合、リグニン自体を有効に利用する方がより合理的である。リグニンは地球上で最多蓄積量を誇る芳香族資源であるが、その構造の複雑さ、単離の難しさ、誘導体化起点となる官能基の乏しさから、現状ではリグニンの有効利用は困難である。従って、今後、構造が単純、単離が容易、且つ反応性の高い新規リグニン構造を生産する大型イネ科植物を作出できれば、高バイオマス生産性という特徴を最大限に活かし、将来的にバイオ燃料生産の原料としてだけではなく、大規模な有用低分子芳香族化合物の供給源として高付加価値化を図れると考えられる。

本セミナーでは、これまで自身の携わった研究を含め、近年盛んに研究が行われている大型イネ科植物の木質、主にリグニンについて紹介をする。