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第157回定例オープンセミナー資料

2012年10月31日

題目

木質構造研究と木造建築
State and trend of wood engineering for timber building.

発表者

北守顕久 (京都大学生存圏研究所生活圏構造機能分野・助教)

関連ミッション

  • ミッション 4 (循環型資源・材料開発)

要旨

建築物の主要部材を木材・木質材料で作ること(木質構造)は鉄骨や RC 等他形式工法と比べ材料の製造エネルギー・再生産可能性の面から低環境負荷であり、また国産材利用は国土保全・地域経済活性化のために資することなどから、持続可能な社会の実現においてその重要性が認識されている。

ところで我が国の新設住宅着工数の大部分は木造が占め、かつ木造建築の大部分は住宅建築であるが、これは要所での大きな法律の改訂やそれに伴う工法・設計法の発展による成果であると言える。一方で実用上は現状の社会体制に応じた手段を受け入れなければならない中で、耐震性能においては構造計算法に曖昧さがあったが、近年では品確法などで求められる性能がより明確化され、工学的信頼性も高まる方向にある。さらには長期優良住宅の制度化で、耐震性に留まらず(気密・断熱など)複合的性能を持つべく工法的改良を続ける必要があると言えよう。また国産材のさらなる活用の要求は継続的であるし、既存住宅の耐震化などの社会問題に対応する必要があるなど、木質構造の研究開発が扱う範囲は幅広い。

一方で中・大規模な木造建築物向けには多様な技術が開発されてきた。海外においてはすでに中規模集合住宅の建築事例も増えてきている。我が国でも近年の「公共建築物等における木材の利用の促進」法公布などを受け、複層階の中規模建築物の木造化を目指す機運が高まっている。いろいろな制約は残されているが、将来の「木造都市化」に向けた下地が整ってきたと言えよう。

本発表ではこれらの木質構造研究の歴史と現状について話題を提供し、これからの木造建築とそれとともにある持続可能な社会に対し、構造面から出来ることに対する議論を深めたい。