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第127回定例オープンセミナー資料2010年11月24日題目
植物はなぜ青臭い? 発表者岸本久太郎 (農業・食品産業技術総合研究機構 任期付研究員) 関連ミッション
要旨葉っぱをちぎると青臭い匂いがする。この匂いの正体は、炭素数 6 個のアルデヒドやその派生物を中心とした脂肪酸誘導体であり、「みどりの香り」と総称される。京都大の高林や山口大の松井らのグループは、みどりの香りが、植物の生態系に重要な役割を担っていることを明らかにしてきた。すなわち、植物が虫に食われると、患部からみどりの香りなどが生じ、それが天敵を誘引して虫を撃退するという仕組みである。巨視的には、植物は香りという「シグナル伝達物質」を用いて虫の天敵という「免疫」を活性化させているように映る。植物の香りを介した生体防御機構は、生態系の各パーツを、ひとつの生命体の各器官に準えることができる好例のように感じられる。 演者は、山口大松井らの研究グループで、みどりの香りの生理学的な機能の研究を行ってきた。その結果、みどりの香りは、病原菌に対する直接的な防御物質として、あるいは防御応答のシグナルとして機能している可能性が示された。今回のセミナーでは、それらの成果を中心に、植物が青臭い理由について議論していきたい。 参考文献
Kishimoto et al. (2005) Plant Cell Physiol 46: 1093–1102 |