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第119回定例オープンセミナー資料

2010年9月8日

題目

宇宙太陽発電に関するよくある疑問と回答 —焼き鳥にさせないために—
Frequently-Asked Questions on Solar Power Satellites
—To Avoid Making a Roast Chicken—

発表者

三谷友彦 (京都大学生存圏研究所・助教)

セミナー後半の生存圏科学萌芽研究課題における共同研究者

  • 田中俊二 (京都大学工学研究科電気工学専攻)
  • 蛯原義雄 (京都大学工学研究科電気工学専攻)

関連ミッション

  • ミッション 3 (宇宙環境・利用)

要旨

宇宙太陽発電構想は、生存圏研究所のパンフレット等の表紙絵にある通り、重要なプロジェクトの一つとして位置づけられている。セミナーの前半では、宇宙太陽発電構想を一般向けにあらためて紹介するとともに、宇宙太陽発電に関してこれまで皆様から頂いた良く聞かれる疑問・懸念を抜粋し、質問に答える。なお、主な質疑応答については末尾に示すので参考にされたい。セミナーの後半では、生存圏科学萌芽研究に今年度採択された研究課題「宇宙太陽発電所の超大規模フェーズドアレーアンテナにおける位相最適化問題の研究」について紹介する。宇宙太陽発電構想では、何十億ものアンテナを使って宇宙から地上へ無線電力送電する。その際、フェーズドアレーと呼ばれる波の干渉原理を利用した方法で、マイクロ波電力を所望方向へ集中させる。この電力集中度合いを最大化するために、数学的アプローチからフェーズドアレーアンテナを検討することが、本研究課題の骨子である。

宇宙太陽発電に関するよくある疑問と回答

Q. なぜマイクロ波を使うのですか?
A. 電波の中で、宇宙から地上へ送電する際に最も適した(最もロスの少ない)ものがマイクロ波だからです。ちなみに、皆さんよくご存じの衛星放送の電波もマイクロ波帯の電波を使っていますが、これも同じ理由です。

Q. なぜわざわざ宇宙で発電するのですか? 地上で太陽光発電すれば十分では?
A. 理論的には、宇宙で太陽光発電した場合には地上で太陽光発電した場合に比べ 10 倍以上の電力が得られます。主な要因は、宇宙では昼夜がないためと、雨・雲・ほこり等がないためです。ただし、太陽電池や送電器を宇宙に打ち上げるコストは、地上に太陽電池を配置するコストとは比べものならないほど高くなります。したがって、宇宙太陽発電のコスト問題は極めて重要です。

Q. 宇宙から大電力のマイクロ波が降ってきて、焼き鳥にならないのですか?
A. なりません。宇宙で太陽光発電した電力を地上数 km にわたって「広くうすく」送電するため、焼き鳥にしようと思ってもできないのです。現在、電波防護指針と呼ばれる指針により、普通の環境下でのマイクロ波強度は 1 cm 平方あたり 1 mW 以下にするように決められています。宇宙太陽発電の場合、受電エリアの外ではこの防護指針を満たすように設計されています。ちなみに、マイクロ波帯の電波は、現時点では X 線・γ 線等のような放射線にみられる影響はなく、熱的な影響のみとされています。