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第62回定例オープンセミナー資料

2007年11月14日

題目

シロアリにおける無機元素循環系の解明に向けた基礎的研究

発表者

陀安一郎 (京都大学生態学研究センター・准教授)

要旨

シロアリは、熱帯域を中心として温帯域にまで分布している社会性昆虫であるが、物質循環側面から見ても重要な役割を果している。有機物の分解者であることから、有機元素の安定同位体分析に関しては多くの研究がなされてきた。特に炭素・窒素の安定同位体比を用いた物質変換過程の知見は多い。さらに近年放射性炭素を用いた研究も行い、昨年度の萌芽ミッションにおいて報告した。

本年の研究は、これに加え無機元素の動態に関する知見を深めることを目的としている。Tayasu et al. (2002) において放射性元素である 210Pb および 137Cs を用いる試みを行なったが、現在無機元素の安定同位体比分析について以下のことが進行中である。表面電離型質量分析計 (TIMS) を用いた、陸水や岩石中に存在するストロンチウムの分析手法は確立しているが、この手法がシロアリにおいても有効であることを確認した。ホウ素はシロアリがエサとしている木材に含まれている元素であり、過剰な摂取においては殺虫効果が得られる。このように植物において必須元素とされているホウ素の同位体比分析の前処理方法を確立するため、多元素が混在した溶液からホウ素の分離を目的とした化学処理の検討を行っている。また、木材やシロアリ本来の含有元素の定量・定性分析を ICP および ICP-MS を用いて行っている。これらのデータを元に、多元素の同位体解析から見たシロアリの生態について発表を行ないたい。

陀安一郎: 第62回定例オープンセミナー(2007年11月14日)