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第53回定例オープンセミナー資料

2007年6月20日

題目

カドミウム汚染土壌を対象とした浄化植物の開発

発表者

増野亜実 (京都大学生存圏研究所・ミッション専攻研究員)

共同研究者

  • 矢崎一史 (生存圏研究所森林圏遺伝子統御分野・教授)

関連ミッション

  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

要旨

カドミウムは生体にとって微量でも害を及ぼす有害重金属であり、代表的な疾患として、我が国最初の公害病であるイタイイタイ病が知られている。社会工業化において、基盤産業資源としてカドミウムは重要な役割を果たしたが、その一方で工場跡地を中心に広範囲な土壌汚染が確認されている。コメ、ダイズなどの農作物はその体内にカドミウムを蓄積する性質を持っていることから、コメを主食とする我が国では、米作地帯のカドミウム汚染土壌の浄化は、緊急に対処すべき課題と認識されている。

近年、土壌浄化の手法として植物を用いた有害物質の除去技術が注目されている。この技術は “ファイトレメディエーション” とよばれ、浄化にかかるコストが安価で使用法も簡便であるという利点がある。重金属汚染土壌に応用される技術には以下のようなものがある。

  1. 植物による抽出: 重金属を植物に吸収・蓄積させて、土壌から重金属を除去する
  2. 植物によるろ過: 植物の根より、汚染廃液から重金属を沈殿し集める
  3. 植物による安定処理: 植物によって土壌中の重金属を安定化させ、二次的に起こる生物・人間への悪影響を軽減する
  4. 植物による揮散: 植物に有害物質を土壌から吸収させ、揮発性物質に変換させ、茎葉からそれらを揮発させる

本研究では、「1. 植物による抽出」をベースに、カドミウム回収時のコスト削減を考慮した新規浄化植物を開発している。すなわち、カドミウムの植物体内への取り込みやその代謝部位・蓄積部位への運搬・集積のプロセスに直接関与しているトランスポーター(輸送体タンパク質)の膜局在をエンジニアリングすることにより、蓄積部位を地上部のみに制御する。地上部にカドミウムを蓄積させることで、地上部のみを刈り取るだけで良くコスト削減が可能となると期待される。