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2016(平成28) 年度 生存圏科学 ミッション研究 20

更新日: 2016/08/23

研究課題

地殻活動に起因した電磁界の観測研究

研究組織

 代表者 筒井稔(京都産業大学名誉教授)
 共同研究者 小嶋浩嗣(京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御

研究概要

本研究代表者のこれまでの研究成果としては、地震発生後に岩盤内を伝搬する地震波により電磁波が励起される事を明らかにした。その電磁波励起のメカニズムは、基本的には地震P波の振動による岩盤内での圧電効果によるものであり、その電磁波の振幅はS波の振幅により増大されているため、観測では伝搬しているS波の波頭で電磁波が放射されている状況が見られ、更に地上へも放射されている事が確認されている。このような電磁波の励起の主たる原因は岩盤内における圧電効果である事を考えると、地震発生前の岩盤への静的圧力の増加段階においても圧電効果による自発分極の増加による直流電場の発生が予想される。その直流電場を計測しようとするのが、本研究の主眼点である。

この目的のために、まず直流電場を測定するための高感度のセンサーの開発がある。電場の3次元ベクトルを明らかにするために、空間の3軸方向に線状ダイポールアンテナを張ってそれを測定する事にした。その場合、主に直流成分のみを検出するために、アンテナの給電点においては交流成分を除去するための電子回路を挿入する必要があった。この場合その電子回路により検出アンテナ2素子の電気的平衡を損なわないようにする必要があり、その回路構成が開発のキーポイントとなっている。一方、地上空間には大気電場成分も存在するので、その影響を除去するためにアンテナ素子全体を絶縁物で覆って荷電粒子との接触を遮断している。この観測の当初に開発した回路を用いて試験的に観測を行った結果、交流成分を十分に除去できていない事が判ったため、現在は新たな回路構成に変更して、試験観測を続けている。

観測点における電磁界環境としては、電車の直流電源により生ずる影響を避ける事が重要であった。そこで本観測点としては、鉄道から9 km以上離れた京都市北部の山間部にある民家の敷地(京都市右京区京北町細野小字庵ケ谷2-11)を借用して、そこにセンサーを含めた観測装置を設置した。センサーとしては、東西・南北・上下方向成分の電界アンテナと3次元地震計および磁界変動をモニターするための3次元磁界サーチコイルである。これらセンサーからの検出信号を5台のパーソナルコンピュータに装着してあるAD変換器に入力し、実時間で解析・表示している。目標としている直流電界に対しては周期1秒のサンプリングで取り込み、波形の連続記録データをハードディスクに記録するようにしてある。一方、地震計データと短周期成分の電磁界信号成分については、256 Hzのサンプリング周波数で取り込み、その波形を記録した後に、周波数スペクトル解析を行い、連続スペクトログラムとして実時間表示し、その画像データをハードディスクに記録している。これらの信号記録の時間的信頼性を確保するために、GPS信号を取り込みコンピュータの時計としている。

現在、直流電界アンテナの給電部の回路構成の改良を繰り返しながら、試験観測を行っており、観測点近傍で発生する地震に対し、その発生以前の直流電界のデータを詳細に調べている。

以下に京北町の山間部に設置した3次元電界アンテナと3次元磁界サーチコイルシステムおよびデータ解析・表示装置の写真を揚げておく。

筒井稔: 2016(平成28)年度生存圏ミッション研究 図 1
筒井稔: 2016(平成28)年度生存圏ミッション研究 図 2

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2016年8月5日作成

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