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2016(平成28) 年度 生存圏科学 ミッション研究 14

更新日: 2016/08/29

研究課題

微細気泡水の分子ダイナミクス解析

研究組織

 代表者 小浦節子(千葉工業大学工学部)
 共同研究者 上田義勝(京都大学生存圏研究所)
徳田陽明(滋賀大学教育学部)
小川雄一(京都大学大学院農学研究科)
謙(東京理科大学基礎工学部)
関連ミッション
  • ミッション1 環境診断・循環機能制御
  • ミッション4 循環材料・環境共生システム
  • ミッション5 高品位生存圏

研究概要

通常のミリスケールの気泡は水中で急速に浮上し、水面で破裂して消失する。その一方、ナノスケールの気泡は水の粘性があるためにすぐには浮上せず、ある一定の期間、水中に滞留する。このようなナノスケールで極微細化した気泡を微細気泡と定義する。微細気泡は各分野(洗浄・農林水産業)にてすでに利用効果が認められつつあるが、その理化学性を深く理解し、特に基礎科学特性に関する研究を短期間のうちに進める事が生存圏科学として広い理解につながると考えている。我々はこれまで培ってきた電気・電気化学特性に関する微細気泡の解析、化学反応場の特徴をより精細にとらえつつ、その場観測としてテラヘルツや中性子ビーム、X線回折等を利用する事で、水中の微細気泡の形成過程や気泡のダイナミクス解析を直接観測し、これまで未解明であった微細気泡科学を探究する。

微細気泡の水中における中性子散乱実験

全散乱測地及びX線開設を用いての微細気泡形成過程の解析

水中における微細気泡の形成に関しては、未解明な部分が多い。特に、水分子の気泡に対しての配位に関しては諸説ある。そこで、世界最大級のパルス中性子源である米国オークリッジ国立研究所のSpallation Neutron Source (SNS)の全散乱装置(液体構造解析用散乱装置)NOMAD、もしくはSpring-8でのX線回折装置を用いて散乱実験を行い、微細気泡周辺の水分子の配位状態を解明する。尚、Spring-8での測定については、事前測定において通常の水とは傾向が若干異なる事を確認しており、本申請研究において詳細な実験測定を行う事で、原理解明が期待される。
中性子散乱測定においては、水素は非干渉性散乱が大きいので、重水を用い、バブルには空気の代わりに散乱強度、散乱長が重水素や酸素と異なるものを用いて、コントラストを強めて実験を行う。

中性子非弾性散乱測定による微細気泡ダイナミクスの解析

水分子の気泡のダイナミクスを解析するために、非弾性中性子散乱装置を用いて、散乱実験を行う。その際に、微細気泡の存在下で急速冷凍した氷を測定する。結果からえられた部分状態密度(PDOS)により、微細気泡周囲での水素のダイナミクスを解析する。結果とあわせて、微細気泡の水中での挙動に関しての基礎的知見を得る。

微細気泡とGHz~THz帯電磁波との共鳴現象の解析

マイクロ・ナノメートルオーダーの微細気泡について、GHz~THz帯での誘電率測定および解析を行う。

純水中に含まれる微細気泡の測定(酸素・窒素)

水中に108個/mLオーダーで含まれる微細気泡(酸素及び窒素により生成)について、誘電率測定を行い、その相関について検討を行う。誘電率測定にはフーリエ変換型遠赤外分光器もしくは時間領域分光装置を用い、全反射光学系や透過測定系による分光測定を行う。この結果から複素誘電率を導出し、さらにはDebye-Lorentzフィッティングなどを用いた解析から水分子の遅い緩和、速い緩和、分子間振動の成分を抽出する。これらの解析により、水分子の回転や、分子間振動の情報が誘電応答として測定されるため、水素結合の安定性、非水素結合の状態、分子間振動などについて評価を行う。

他の測定パラメータとの比較

微細気泡生成時には、気泡の電気伝導度や溶存酸素などが変化する事がわかっており、特に電気伝導度については気体種別によらず気泡の濃度に応じた変化があることがわかっているため、NMRによる解析結果とも合わせて水分子の構造上の変化に対する理論化・定式化について検討を試みる。

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2016年8月4日作成

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