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2015(平成27) 年度 生存圏科学 ミッション研究 3

更新日: 2016/01/05

研究課題

スギ・ヒノキ混交林における土壌塩基養分の空間分布特性の解明

研究組織

 代表者 伊藤嘉昭(京都大学化学研究所)
 共同研究者 谷川東子(森林総合研究所)
満(兵庫県立工業技術センタ-)
矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
杉山暁史(京都大学生存圏研究所)
山下尚之(アジア大気汚染研究センター)
溝口岳男(森林総合研究所)
整(物質材料研究機構)
平野恭弘(名古屋大学大学院環境学研究科)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

樹木の植栽が、その特性として土壌を肥沃にするのか、もしくは栄養を枯渇させて土壌を痩せさせるのか、という知見は、人類が永続的に森林を利用するための施策を立案するために不可欠な情報である。本邦の代表的な造林樹種であるスギは土壌に肥沃にし、ヒノキは土壌を劣化させると考えられてきた。しかしスギはもともと養分の多い土地に、ヒノキはもともと痩せて酸性の土地に植えられることが多く、これらの植物特性が土壌環境にかかわらず発揮されるのかどうかは長らく不明であった。そこで先行研究では栄養環境の大きく異なる15林分を選び、その土壌を採取して養分や酸性度を調査し、約20年前の調査時の値と比較した。その結果、肥沃な土壌のスギ林では土壌はますます肥沃になり、痩せた土壌では、スギが本来持っている塩基養分(とくにカルシウム)を貯留する能力が、発揮されにくいことが明らかになった。一方で、ヒノキはトウヒなど多くの樹種と同様に、土壌養分を消費し酸性化させる傾向があった (Tanikawa et al., Forest Ecology and Management 2014)。そこで同一斜面上に成立するスギ・ヒノキ混交林の土壌養分空間分布特性を、ジオスタティスティックス解析により明らかにすることを本研究の目的とした。とくに1)スギの養分貯留機能はヒノキとの混交林でも発揮されるか? 2)発揮される場合のスギの養分貯留機能が及ぼす影響範囲は樹幹直下か?という2点に着目している。本研究は「環境を保全しつつ持続的に木質資源を蓄積・利活用するシステムの基盤の構築」を目指しており、人類生存圏の正しい理解(診断)と問題解決(治療)に資するものである。

試験地

植物の養分貯留/枯渇影響は、樹齢とともに明瞭になると考えられるため、本調査は樹齢の高いスギ・ヒノキ混交林で行う。調査地は、長伐期施業を目的とした管理が行われている比叡山延暦寺・地主権現林分である。ここでは90年生のヒノキ林分に、スギが混入している。植物が利用可能な土壌の養分形態の塩基類(交換性塩基)があらかじめ森林総合研究所により測定済みである(溝口岳男・平野恭弘・谷川東子・金子真司・古澤仁美・上田泰弘・伏屋尚香 2007 比叡山壮齢ヒノキ林表層土壌の空間異質性、日本林学会大会学術講演集118:695)。

試料と計測方法

林内に斜面長120 m、幅50 cmの方形区を設置し、2005年に縦横10 mごとの55点の交点から表層土が溝口らにより採取されている。この風乾土壌を微粉砕し、蛍光X線法により全カルシウム濃度、全マグネシウム濃度、全カリウム濃度を測定する。交換性塩基類および今回測定の塩基全濃度を、ジオスタティスティックス解析にかけて、スギの養分蓄積能がヒノキ林の中で発揮されるのか?スギの養分貯留能の影響範囲は樹幹直下であるか?さらに他の領域と明瞭に区別できるか?スギとヒノキの塩基類の空間分布は類似性や異質性があるか?という点について検討する。解析に必要な立木位置、胸高直径などの樹木情報および地形情報は、神戸大学からすでに提供を受けている。さらにカルシウムについては、ホットスポットなど特徴的な元素空間分布が見られた地点において、高分解能2結晶分光分析法を用いてカルシウムの存在状態を把握し、可給態である交換性カルシウム含有率と全カルシウム存在状態との関係を解析する。

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2015年8月6日作成

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