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2015(平成27) 年度 生存圏科学 ミッション研究 5

更新日: 2016/01/05

研究課題

太陽活動長期変動研究のためのCa II K太陽全面画像データベースの改良と解析ソフト開発

研究組織

 代表者 上野悟(京都大学理学研究科・附属天文台)
 共同研究者 津田敏隆(京都大学生存圏研究所)
北井礼三郎 (仏教大学)
歩(京都大学宇宙総合学研究ユニット)
柴山拓也(名古屋大学理学研究科)
野津翔太(京都大学理学研究科)
野津湧太(京都大学理学研究科)
坂上峻仁(京都大学理学研究科)
河瀬哲弥(京都大学理学研究科)
関連ミッション
  • ミッション 3 (宇宙環境・利用)

研究概要

京都大学理学研究科附属天文台では、カルシウムK線での太陽彩層の全面観測を1928年以降40年余りに渡り継続してきた。太陽活動・彩層活動をこのような長期間に渡って観測したデータセットは世界的にも少数であり、科学的にも貴重な資料であるため、我々はこれを定量的に活用するための作業を行なって来ている。

オリジナル資料である写真乾板は、既に90年近く経過してその劣化が進みつつあったため、平成25年度までの期間で全て一通りデジタル化を行なった。その後、平成26年度にはそれら全てに対する閲覧用JPEG画像の作成と、各デジタル化画像に対してIUGONET等で利用されているSPASEフォーマットに従ったメタデータの作成を行ない、独自webサイト上での公開と、IUGONETメタデータ・データベースサイトでの検索が可能な状態への整備を行なった。

本プロジェクトの目的は、太陽活動周期4サイクルに渡る太陽-地球環境の変遷を明らかにするための基礎となるデータ整備と、キーとなる太陽エネルギーの物理量導出を行なうことであるが、今年度は特にこれらのデータに適切な画像処理を加えることにより、定量的な解析に耐えうる品質に向上させることと、その処理後のデータから「プラージ・インデックス」等の太陽紫外線放射量の指標となる値を導出する解析ソフトを整備することが目標である。

写真乾板からデジタル化を完了した Ca II K線太陽全面画像の総数は、12,000枚弱となっている。現在、全てのデジタル化画像の太陽サイズの統一化と、方位補正(太陽の南北方向を画像の上下方向に合わせる)が終わり、その状態のデータを既にJPEG画像としてweb上でカレンダー形式に整備して公開している(http://www.hida.kyoto-u.ac.jp/ASKANIA/Ca/html_all/)。しかしながら、「プラージインデックス」の導出などのような定量的解析に掛けるには、まだいくつか障害が残っている。

下図は過去100年の間で最大の面積だったと言われている、1947年4月に出現した黒点群が写っている日の画像データ例である。このデータからも分かるように、
 ・分光スリット幅のムラによる、多数の細かな筋状模様
 ・スリットスキャン中の天候変化による、像の明るさの変動
 ・写真乾板の経年劣化によるシミや汚れ
が、太陽表面そのものの模様の輝度測定を困難にしている。

上野悟: 2015(平成27)年度生存圏ミッション研究 図

本事業では、今年度、先ずはこれら太陽起源のもの以外のパターンを完全に消去する作業を行なう。この過程で、一部のデジタル化データには、太陽面上の明るい領域が飽和していたり、暗い領域の数値情報が切り捨てられているものも見受けられるため、それらを検出して、再デジタル化する作業も併行して実施する。これらの較正作業が完了した後に、補正された画像は、定量解析に適したFITSと言うフォーマットに変換し、改めてweb上での公開と、IUGONETメタデータデータベースへの登録を行なう。そして、我々自身も、これらのデータを用い、太陽面上の明るい領域の面積を積算した「プラージインデックス」等の算出を行ない、それらの指標の時間変動が、太陽紫外線放射量や地球上層大気の物理量の時間変動と如何に一致するか否かの検証を行なって行く。

本データセットは、直接的には太陽活動・太陽彩層活動を把握する基礎資料であるが、彩層活動は太陽からの紫外線放射の指標となるものであり、地球上層大気への紫外線放射および大気加熱問題にとって重要な観測的境界条件を与えるものである。そこで本事業では、得られた結果をIUGONETのシステムを通して分野横断的な研究者コミュニティに提供し、地球環境データとの比較研究の推進を図りたい。特に、最終的には、電離層や成層圏(オゾン層)に各々影響を及ぼす太陽紫外線波長域の放射量長期変動の情報を導出し、それらを各地球大気層における長期環境変動に関する研究活動に役立てたい。

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2015年7月22日作成

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