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2015(平成27) 年度 生存圏科学 ミッション研究 7

更新日: 2016/01/05

研究課題

植物のアルカロイドが生態系ネットワークの創成に果たす役割の解明

研究組織

 代表者 大串隆之(京都大学生態学研究センター)
 共同研究者 矢崎一史(京都大学生存圏研究所)
高梨功次郎(信州大学山岳科学研究所)
崇(京都大学生態学研究センター)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

生物多様性の保全は、生物資源の持続的利用を可能にする地球環境の再生に不可欠である。一方、生物多様性は、生態系の基盤生物である植物とそれに依存する動物が、両者の間の多彩な相互作用を通して形作る生態系ネットワークにより維持されている。とりわけ、植物が病害虫から身を守っている多様な生理活性物質は、植食者との長い攻防の歴史(進化的軍拡競走)の産物である。しかし、その役割について植物の防衛戦略の理解に留まり、生態系レベルの意義を明らかにした研究はない。最近になり、植物の防衛形質は、種内の変異が大きく、これが防衛効果に重要な役割を果たしていることが指摘され始めた。防衛効果の種内変異は、自然界では異なる抵抗性をもつ植物個体がモザイク状に分布していることに依っている。このため、植物の防衛効果はその植物のみならず、周りの他種や同種の異なる遺伝子型の存在に大きく左右される。事実、前年に行ったミッション研究では、近隣に防衛能力の高い個体がいると当該個体の防衛効果が強化される「連合効果」が明らかにされており、植物の防衛戦略の新たな特徴として注目に値する。このように、個体の防衛能力は必ずしも自身の適応度を表すわけではない。植物の防衛形質とその生態系レベルでの意義を解明するには、生態系を生態系ネットワークが駆動する動的なシステムとして捉える間接相互作用網の視点が不可欠である。

本研究では、植物の防御化学物質の代表であるアルカロイドに注目して、ニコチン含有量の異なる品種(遺伝子型)のタバコを実験圃場で栽培し、植物の防御形質が生態系機能に果たす役割を野外操作実験により明らかにすることである。特に、間接相互作用網の観点から、植食者により誘導される防御化学物質ニコチンの空間的・時間的な変異が、生態系ネットワーク(植食者および送粉者ネットワーク)を介して、生態系機能に与える影響と、そのフィードバックとしての生態系プロセスを通した植物の成長・繁殖特性を評価する。

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2015年7月22日作成

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