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2005(平成17) 年度 生存圏科学 萌芽研究 4

更新日: 2017/09/22

研究課題

2005(平成17)年度萌芽ミッションプロジェクト 4
ホウ酸は何故シロアリに有害か

研究組織

 代表者 東順一 (京都大学農学研究科)
 共同研究者 角田邦夫 (生存圏研究所)
剛 (生存圏研究所)
蓮尾秀一 (京都大学農学研究科)

研究概要

ホウ素は、植物にとっては必須微量元素の一つで、96~99 % 以上が細胞壁に存在し、ラムノガラクツロナン II と呼ばれるペクチン成分と結合して架橋構造を形成して一次壁を強固にするもととなっている。これに対し、ホウ酸とホウ酸塩は動物や昆虫には障害的に作用し、ゴキブリやシロアリの防除薬として有用である。ホウ酸はシロアリに摂取され、巣に蓄積し、コロニー全体のホウ酸濃度が上昇し、コロニーが死滅する。しかし、ホウ酸の動物・昆虫に対する毒性作用の詳細は不明である点に鑑み、シロアリに対するホウ素の作用メカニズムの解明への手がかりを得ることが本研究の目的である。本研究では、イエシロアリの職蟻をホウ酸を含浸させたアカマツの辺材の木粉で飼育し、ホウ酸のシロアリ体内への取り込みを分析した結果、イエシロアリの職蟻はホウ酸の有無を問わず、餌を摂食し、死亡したシロアリは一頭当りホウ素を約 20 ppm 含んでおり、その約 10~20 % が体表組織に、約 50 % が体表・消化管以外の体液部に存在する(60~70 % が消化管以外の部分に存在する)ことがわかった。脂肪体に存在する量は限られているので大部分は体液に存在することになる。消化管にもホウ素は存在しているが、腸壁に蓄積することはなかった。しかし、ホウ酸の摂取により、共生原生動物が消失し、消化管が著しく縮退していた。11B-NMR によると、体内に取込まれたホウ素は遊離のホウ酸の形で存在している。従って、ホウ酸はシロアリ腸壁からホウ酸の形で取込まれ、遊離の形で存在すると考えられる。この研究成果は、シロアリの防除、木材の高耐久性向上の基礎研究にとどまらず、将来環境にやさしく、より安全な長期保存型木質材料の開発に寄与すると考えられる。

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