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2009(平成21) 年度 生存圏科学 萌芽研究 6

更新日: 2017/09/22

研究課題

針葉樹バイオマス変換に有用なリグニン分解担子菌の探索・機能解析
—地域生物圏発信型生存圏研究—

研究組織

 代表者 佐藤伸 (鳥取環境大学・環境情報学部環境マネジメント学科)
 共同研究者 渡辺隆司 (京都大学・生存圏研究所)

研究概要

植物が太陽光を利用して水と二酸化炭素から作り出す光合成産物である草木系バイオマスは、燃焼によって大気中に放出されてもカーボンニュートラルである特性から、石油に代わるエネルギー資源として、世界中でバイオマス利活用のための技術開発が進められている。森林が国土の 7 割を占める我が国においても、木質バイオマスは最も身近な資源である。「バイオマス・ニッポン総合戦略」によると、わが国には原油換算で廃棄系、未利用系、資源作物を合わせると、4,600 万キロリットルの利用可能なバイオマスが存在する。エネルギー資源に乏しいわが国では、バイオマスの利活用は積極的に取り組むべき課題である。

木質バイオマスから酵素糖化・発酵により輸送用燃料を製造するためには、木材中の細胞壁多糖であるセルロースやヘミセルロースの損失を抑えつつ、これらの多糖を被覆するリグニンを分離する必要がある。これまでリグニンによる被覆をはずす方法として、粉砕、爆砕、電磁波照射などの物理的処理、ソルボリシス、酸、アルカリ、などの化学処理、木材腐朽菌による生物処理などが研究されてきた。これらの中で微生物処理は、エネルギー投資が少なく環境負荷が小さいと期待される。木材腐朽菌処理においては、リグニンを高選択的に分解する選択的白色腐朽菌の利用が求められるが、そうしたバイオマス変換に有用な菌はあまり知られていない。特に、スギなど針葉樹のリグニンを分解する優秀な選択的白色腐朽菌の例は限られており、生物プロセスを組み込んだ針葉樹バイオマス利活用のボトルネックとなっている。

研究代表者の住む鳥取県東部は山陰地方有数のスギの産地である。その中でも智頭町芦津財産区は、良質のスギを育む土地柄から、何百年にもわたりスギの植林と伐採が繰り返し行われてきた場所である。このようなスギ単一の森にはスギを強力に分解、無機化して速やかな炭素循環を行う木材腐朽菌が存在することが予想される。

本研究ではスギに対して脱リグニン効果の高い木材腐朽担子菌を探索し、その機能解析を行ってスギをはじめとした針葉樹の有用物質変換技術のシーズとなる基礎的な知見を得ることで、地域生物圏特性に立脚した地域発信型の生存圏研究の創成と、低炭素社会の実現に資する基盤確立を目標としている。

佐藤伸 2009

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2009年9月15日作成

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