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2010(平成22) 年度 生存圏科学 萌芽研究 5

更新日: 2017/09/22

研究課題

太陽物理学との連携による超高層大気変動現象の研究

研究組織

 代表者 上野悟 (京都大学理学研究科附属天文台)
 共同研究者 寛生 (京都大学生存圏研究所)
磯部洋明 (京都大学宇宙総合学研究ユニット)
歩 (京都大学宇宙総合学研究ユニット)
新堀淳樹 (京都大学生存圏研究所)

研究概要

超高層大気における諸現象は、下層大気からのエネルギーや運動量の流入、電離圏・プラズマ圏での電磁エネルギー輸送、化学反応、磁気圏?電離圏結合などによって引き起こされている。中でも太陽からの紫外線と、磁気圏を介した太陽風からのエネルギーの注入は、超高層大気変動の主要な要因の一つである。

現在、太陽観測分野では 2010 年に米国の太陽観測衛星 Solar Dynamic Observatory が打ち上げられ、それには、電離圏変動に主要な寄与をする太陽紫外線領域を広帯域に分光観測が行なえる装置 (EVE) が搭載され、まもなく定常観測が始まる段階にある。EVE のように広い波長域で定常的な観測データが得られるのは初めてのことであり、様々な超高層大気データ群との比較研究によって、太陽からの紫外線による電離圏・超高層大気への影響を解明することができる。さらに、太陽データを付き合わせることで、そのデータから地球に到達する紫外線量を効果的に表す指標を構築する研究に役立てられ、過去の太陽データから、過去の太陽活動の超高層大気への影響状態を推定することも可能となる(下図参照)。

一方、地球の電離圏と太陽の下層大気である光球・彩層は、電離度が低く、中性粒子と荷電粒子の相互作用が重要であるという点で類似性がある。太陽におけるコロナー彩層結合と、地球の磁気圏?電離圏結合など、プラズマ物理学のアナロジーで両者を比較することにより新たな知見が得られる。

本研究の長期的な目的は、太陽物理学者と地球大気物理学者との連携を推進し、生存圏現象の中でも、特に太陽による超高層大気への影響のプロセスを総合的に理解することにあり、今回、本研究では、その出発点として、平成 21 年度よりスタートした特別教育研究費プロジェクト「超高層大気長期変動の全球地上ネットワーク観測・研究(IUGONET)」が取り扱っている多様なデータベースを活用して、太陽から超高層大気に至る観測データの充実したイベントリストを作成し、共同でデータ解析にあたる予定である。また、プラズマ物理的観点からの共同研究の可能性についても理論的な検討を行う。

具体的なターゲットは、下記の通り:

  1. 太陽黒点群の出現から消滅までの期間、紫外線の増減や太陽風の変動などの太陽活動の変動と、地球大気の応答の長期変動の相関関係を調べ、個々の大気変動の要因となった太陽面現象の同定を試みる。
  2. SDO 衛星の EVE による紫外線分光データから、高層大気変動を引き起こしたと考えられる太陽紫外線増光イベントのリストを作り、高層大気変動における特徴と、その時の紫外線スペクトル及びその他の太陽面現象の特徴に相関関係がないか探る。
  3. 弱電離プラズマとしての太陽下層大気と地球電離圏の物理的アナロジー、領域間結合としての太陽コロナーコロナ結合と磁気圏?電離圏結合の物理的アナロジーを整理し、理論的側面から共同研究の可能性を探る。(太陽フレア加速電子の彩層流入現象とオーロラとのアナロジー、地球大気のプラズマバブルと太陽下層大気における磁気浮上現象とのアナロジー等)

上野悟: 2010(平成22)年度 生存圏科学萌芽研究

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2010年8月10日作成

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