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2012(平成24) 年度 生存圏科学 萌芽研究 2

更新日: 2017/09/23

研究課題

琵琶湖の環境変遷に関わる生物由来難分解性有機物の特定

研究組織

 代表者 池谷仁里 (兵庫県立大学大学院生命理学研究科)
 共同研究者 菓子野康浩 (兵庫県立大学大学院生命理学研究科)
西村裕志 (京都大学生存圏研究所)

研究概要

琵琶湖は 400–600 万年前に形成された世界有数の古代湖であり、60 種以上の固有種を含む多様な生物種によって生態系が形成されている。また、琵琶湖は周辺の産業、京阪経済圏 1400 万人の淡水資源として我々の生活に深く結びついており、我々にとって身近な生存圏である。

琵琶湖の富栄養化による水質汚濁は、集水域における有機物の流入負荷削減対策にも関わらず、未だ改善されていない。この原因として、外部流入負荷よりもプランクトンの一次生産による内部負荷の寄与率の方が遥かに大きいことが指摘されている。内部負荷として湖水生物によって分解され難い有機物(難分解性有機物)の蓄積が挙げられている(図)。この難分解性有機物の蓄積の原因を突き止め、対策することは、琵琶湖の水質改善に繋がる緊急の課題である。

我々は近年増加してきた植物プランクトン(シアノバクテリア Aphanothece sp.)に着目した。Aphanothece sp. は細胞外マトリクス多糖(粘質鞘)をもっている。この粘質鞘を単離し、詳しく解析した結果、粘質鞘中には難分解性有機物が含まれることが判明し、前述の琵琶湖汚染の一因である可能性が示唆された。更に、難分解性有機物は、水質汚濁だけでなく、プランクトンの増殖にも影響を及ぼす可能性が示された。そこで、本研究では Aphanothece sp. の粘質鞘に存在する難分解性有機物を特定し、化学構造を明らかにする。この植物由来の難分解性有機物を特定することにより、琵琶湖の水質汚濁メカニズムやプランクトンの長期的な変遷メカニズムの解明に繋がることが期待される。

池谷仁里: 2012(平成24)年度 生存圏科学萌芽研究図 琵琶湖湖底に堆積されたプランクトンの死骸

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2012年7月31日作成

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