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2013(平成25) 年度 生存圏科学 ミッション研究 14

更新日: 2018/07/18

研究課題

福島県下の農用地における放射性物質の分布調査とダイズの放射性セシウムの移行状況の研究

研究組織

 代表者 二瓶直登 (東京大学大学院農学生命科学研究科)
 共同研究者 上田義勝 (京都大学生存圏研究所)
杉山暁史 (京都大学生存圏研究所)
徳田陽明 (京都大学化学研究所)
伊藤嘉昭 (京都大学化学研究所)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

全国有数の農業県である福島県で福島第一原子力発電所事故が起こり、放射性物質の広がりにより、食の安心・安全といった生存圏を脅かす状況となっている。生産者や消費者を問わず、先行きの見えない不安や失望により、廃業する農家、購買回避する消費者も多数現れている。このような状況は、福島県だけの問題ではなく、我が国の食料の安定供給にかかる生存圏全体の問題でもあり、世界の食料問題へも波及するものである。

申請者は、野菜、果樹、漁業関係者からの要望が強い非破壊測定器の開発や、作物の放射性物質吸収メカニズムを解明とその地域に適した効果的な吸収抑制対策の構築など、生産現場のニーズに応えた現場で活用できる研究開発に携わってきた。さらに、風評被害を打開するため、正しい放射能の知識や、安全な農産物を流通させるためにどのような基準や検査体制があるかを理解する基礎教育についても検討を行いつつある。震災復興に向けた更なる研究として、営農再開や安全な農産物生産に向けた対策を講じるためには、農用地における放射性物質の分布状況を把握し、土壌-水-植物-動物の生態系や、地表-河川-湖沼-海の自然循環における移動、堆積過程の動態を明らかにする必要がある。これらの広い範囲でのフィールドワーク研究は生存圏科学として最も重要な研究課題の一つである。

本研究課題は、現在も継続して調査されている福島県の農用地の放射性物質の分布調査を行いつつ、ポット栽培等を使った試験を行いながら、主にダイズの放射性セシウムの移行原理について解明していく。この課題は大学間連携による研究の相乗効果を発揮させるべく、また福島県の復旧・復興に努め、我が国の食料の安定供給につなげていくため、東京大学、京都大学それぞれの長所を活かした試験を行い、データ比較をしながら原理解明を行う予定である。原子力災害対策法のもと福島県が原発事故後から実施している農産物モニタリングの結果では、放射性セシウムの基準値(100 Bq/kg)以下ではあるが、ダイズが他の作物として比較して、やや高い値が測定されている。福島県内にダイズは 3000 ha ほどあり、重要な土地利用型作物でもあるため、本研究では下記の研究課題を設定し、それぞれの担当において課題解決のため研究を推進していく。

  • 福島県内における放射性物質の調査 (担当: 二瓶、上田、徳田)
    • 現地の大豆栽培ほ場などで放射性物質の分布調査を行い、土壌及び植物サンプルの採取を行う。採取したサンプルについては、植物サンプルについては東京大学大学院農学生命科学研究科附属放射性同位元素施設において放射性物質の測定を行い、土壌サンプルについては京都大学放射性同位元素センターにおいて同様に測定を行いつつ、無機組成の解析や土壌洗浄の可能性について探る。
  • 数種の作物のセシウム吸収比較 (担当: 二瓶、杉山、伊藤)
    • ダイズがどの程度セシウムを吸収しやすいのかを明らかにするため、ポット等同一条件下で数種類の作物とともにダイズを栽培し、セシウムの吸収量を比較する。
    • サンプリングは葉、茎、子実等部位別に分けて体内での分布の違いを検討するともに、X 線回折測定により子実中の作物別のセシウム分布を調査する。
  • セシウム吸収機構の解明に関する試験 (担当: 二瓶、杉山)
    • ダイズのセシウム吸収・移行を検討するため、放射性セシウムを用いて、ダイズの栄養条件(主にカリウム含量)を変えた条件下で、吸収等を検討する。
    • また、微生物の寄与を検討するため、オートクレープした土壌の利用や、微生物と共生しない品種(非着生)、通常より微生物が多く着生する品種(超着生)等を用いた解析を行う。

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2013年7月16日作成

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