研究課題
持続的な熱帯林業プランテーションにむけた生態系管理
研究組織
代表者 | 吉村剛(京都大学生存圏研究所) |
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共同研究者 | 藤田素子(京都大学東南アジア地域研究研究所) 大村善治(京都大学生存圏研究所) 小林祥子(玉川大学農学部) Muhammad Iqbal (Daemeter Consulting) |
関連ミッション |
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研究概要
背景と目的
熱帯の林業プランテーションは集約的な造林と短期伐採によって、天然林を収奪的に利用することなく、木質バイオマスの持続的な供給を可能にする。しかし、プランテーション造成には、生物多様性や生態系サービスの減少を引き起こすリスクが存在する。これまでの申請者らの研究では、プランテーションに残された天然林には比較的高い生物多様性がみられ、地域の生態系サービスの維持に貢献すると考えられている。しかし、本研究の対象地では、度重なる森林火災による天然林の劣化とサルによるアカシアの樹皮剥ぎによって、持続的な木材生産活動が脅かされ、アカシアからユーカリへの転換を余儀なくされた。本研究では、プランテーション生態系の健全性を生物多様性から評価し、長期モニタリングを視野に入れた持続的なプランテーション管理につなげるための基礎的な知見を提供することを目的とする。
特にプランテーション生態系の構成要素である天然林と人工林(ユーカリ林)の生物多様性を調べ、同一地域での過去の調査結果(2007–08年)との比較によって、どのようなランドスケープやマイクロハビタットが生物多様性の維持に貢献するかを解析する。具体的には、周辺の植生タイプ、森林の階層構造、植栽樹種、林齢、火災の有無などの環境要因による生物多様性への寄与について、多変量解析を用いて特定する。
研究計画・方法
調査地
インドネシア、南スマトラ州ムアラ・エニムに位置するMusi Hutan Persada社(以下MHP社)の管理する林業プランテーションで調査を行う。人工林のほかに、小面積の天然林がパッチ状に残されている。人工林のほとんどは2010年以降、徐々にユーカリへと転換が進められた。天然林の一部は野火の延焼を受けて、樹冠が枯死した。MHP社が設置しているPermanent Sampling Plot(以下PSP)の一部をユーカリの調査ポイントとし、また天然林の調査ポイントを加えてランドスケープ解析および生物多様性調査を行う。
環境要因
マイクロ波衛星(ALOS2/PALSAR)画像と紙地図の情報を用いて、プランテーション内の人工林/天然林の分布を判別し、火災の有無も含めてベースマップを作成する。また、森林の階層構造、林齢等の調査を行い、それらを数値化・カテゴリ化して各調査ポイントの環境要因とする。なお、小林・大村が中心となって行う衛星解析の予算は別途申請中であるため、本申請では計上していない。
生物多様性調査
鳥類を対象に、各調査ポイントにおいてポイントセンサス法を用いて10分間観察を行い、半径25 m以内に出現した種と個体数を記録する。調査ポイントは2017年3月、2018年3月に調査を行ったポイント以外を新たに設定する。
解析
多変量解析(NMDSなど)を用いて、環境要因と生物多様性の関係を解析し、プランテーション生態系が10年間(2007–08年vs.2017–18年)にどのように変化したのか、またどのような環境であれば生物多様性を維持することができるのか考察する。生態系に関する上記の知見を元に、持続的な生産活動のためにはどのような管理を行ったらよいかについての提言も行う。
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2018年8月1日作成