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2013(平成25) 年度 生存圏科学 萌芽研究 14

更新日: 2017/09/23

研究課題

宇宙圏における高エネルギープロトン粒子生成機構ならびに低軌道衛星用次世代推進装置に関する超並列プラズマ粒子シミュレーション研究

研究組織

 代表者 三宅洋平 (神戸大学システム情報学研究科)
 共同研究者 小路真史 (宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)
大村善治 (京都大学生存圏研究所)

研究概要

ますます拡大し続ける人類の生存圏の受け皿として、地球周辺の宇宙空間の利用が有力視されている。しかし人類の本格的な宇宙環境利用を阻む高エネルギー粒子の存在や人類の活動に伴う宇宙プラズマ環境変化など、未解決の問題は多い。解析的手法や、人工衛星による定点観測では取り扱いが難しいこれらの問題に対して、大規模な計算機シミュレーションは有効な手段である。本研究の目的は、大規模超並列プラズマ粒子シミュレーション手法を用いて、人類の有力な生存圏となり得る宇宙圏プラズマ環境の非線形問題に理工学双方の観点から取り組むことである。

理学的観点からは、周波数上昇を伴う電磁イオンサイクロトロン(EMIC)波による非線形波動粒子相互作用について注目する(図 1)。長年人類の謎とされている放射線帯高エネルギー粒子フラックス形成メカニズムや、大気圏への高エネルギープロトンおよび相対論的電子の振り込み過程、結果として起きる電離圏の変化といった大気圏、宇宙圏全体の変化に、これまでに知られていなかったミクロスケールの非線形 EMIC 波動による波動粒子相互作用が与える影響を解明する。一方、工学的な課題として、低軌道衛星における大気抵抗補償用の次世代推進器としての応用が期待される原子状酸素吸入型イオンエンジンに関する全粒子プラズマシミュレーションを実施する。当年度は特にエンジン内部で生起する電子サイクロトロン共鳴、およびそれに伴う電子・原子状酸素間衝突電離過程に着目した数値解析を行う(図 2)。

シミュレーションを用いた従来の宇宙圏プラズマ環境研究では、計算資源の制約から現実とは異なる次元や時空間スケールでの解析を余儀なくされ、そのことが計算結果の宇宙環境理解への直接的な適用を妨げていた。新しい電波科学計算機実験装置(A-KDK)で可能となる大規模シミュレーション研究によって、これまでに類を見ない高性能計算技術を軸にした生存圏科学、特に地球周辺の宇宙プラズマ電磁環境に関する包括的な理解を最終目標とする。

三宅洋平: 2013(平成25)年度 生存圏科学萌芽研究 図 1図 1: トリガード放射の瞬時周波数の時空間発展及び波動の周波数を上昇させる共鳴電流(黒線)及び非線形成長させる共鳴電流(赤線)

三宅洋平: 2013(平成25)年度 生存圏科学萌芽研究 図 2図 2: 大気吸入型イオンエンジン内部の電離過程によって発生したイオン分布

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2013年7月25日作成

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