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2013(平成25) 年度 生存圏科学 萌芽研究 11

更新日: 2017/09/23

研究課題

イソフラボンダイナミクスの解明と環境親和性が高く持続的な植物有用物質生産系への応用

研究組織

 代表者 高橋征司 (東北大学工学研究科)
 共同研究者 杉山暁史 (京都大学生存圏研究所)
亨 (東北大学工学研究科)
矢﨑一史 (京都大学生存圏研究所)

研究概要

イソフラボンはマメ科植物に多量に含まれ、根において共生的窒素固定を行う根粒菌の誘引シグナル分子として機能する一方で、病原菌感染に対する抗菌物質としても機能するため、植物-微生物間相互作用において非常に重要な役割を果たす。また、イソフラボンはそれを摂取した動物の体内でエストロゲン様の作用を示す物質に変換されるため、乳癌や前立腺癌、循環器系疾患に対し効果的な予防治療薬ともなり得る。従って、実用作物であるダイズにおけるイソフラボンの代謝制御機構の解明と,それに基づく高度な代謝工学系のデザインは、食糧生産や有用な生理活性成分の安定供給など人類の QOL (Quality of Life)の向上と持続的生存に向けて非常に重要な課題である。

植物細胞内で生合成されたイソフラボンのほとんどは直ちに配糖化・アシル化の修飾を受け、溶解度が高く構造的に安定な配糖体として液胞内に蓄積される。一方、植物-微生物間相互作用においてイソフラボンは主にアグリコン型で機能するため、貯蔵された修飾型(配糖体)が必要に応じて細胞外へと輸送され、そこで特異的加水分解酵素により脱修飾され利用されるという機構が想定されている。しかし、イソフラボンのみならず植物二次代謝物全般において、液胞などのオルガネラから細胞外へと代謝物を輸送する機構はほとんど未解明である。本研究は、ダイズ培養細胞におけるイソフラボン放出活性を詳細に分析するとともに細胞内のイソフラボン動態をリアルタイムイメージングで解析することで、液胞から細胞外への新規イソフラボン輸送経路の存在を立証しその制御機構を解明することを目的としている。

液胞からの二次代謝物輸送経路の解明により、輸送機構の改変による次世代の代謝制御システム構築への発展が可能となり、有用二次代謝産物生産のみならず、環境ストレス耐性植物の作出や微生物共生の制御等その応用範囲は非常に広い。また、イソフラボンシグナルの増大によるダイズ-根粒菌間の共生窒素固定の促進は、大気からの窒素固定能の増強とそれに伴う収量増大へつながる。これは、化石燃料を大量に消費して製造される窒素肥料と比較して環境親和性が高く、農業・有用物質生産と共役した地球圏における窒素循環の活性化にも貢献することが期待される。

高橋征司: 20123(平成25)年度 生存圏科学萌芽研究図 イソフラボンの生理機能と想定される細胞内輸送経路

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2013年7月30日作成

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