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2014(平成26) 年度 生存圏科学 ミッション研究 17

更新日: 2017/09/19

研究課題

主に静止衛星を用いた長期雲気候データベースの製作

研究組織

 代表者 西憲敬 (福岡大学理学部)
 共同研究者 塩谷雅人 (京都大学生存圏研究所)
関連ミッション
  • ミッション 1 (環境計測・地球再生)

研究概要

熱帯域の雲頂高度を主体とした長期(約 20 年)データベースを作製し、それを用いた熱帯じょう乱の統計的研究を行う。熱帯域では、エルニーニョ・海洋長周期変動・地球温暖化とも関連するトレンドなど明瞭な長周期変動がみられる。雲活動はその影響を大きく受けるとともに、変動そのものに重要な役割を果たしていると考えられる。対流活動の深さと密接に関係をもち、大きな面積を占める巻雲を主体とする上層雲の雲頂高度は、重要なパラメーターのひとつだといえる。近年、CloudSat や CALIPSO などの衛星観測によって、雲頂高度の直接観測が行われるようになったとはいえ、これらは衛星直下点のごく狭い範囲の観測にとどまり、また観測の蓄積も 8 年程度である。申請者はこれまでに、CloudSat の雲レーダー観測と、静止衛星 MTSAT-1R,-2 の赤外 2 チャンネル観測が同時に行われているサンプルを用いてルックアップテーブルを作製し、静止衛星のみで雲頂高度が推定できる手法を開発してきた。その作成方法および実際に作製したデータは、準リアルタイムで、生存圏データベースの一部として公開されており(名称CTOP)、国内外の研究や特別観測時のモニタリングなどにおいて用いられている。

この研究では、静止衛星とは代替わりのタイミングが異なる極軌道衛星の観測をうまく基準に用いることで、CloudSat 打ち上げ以前の静止衛星についてのルックアップテーブルを作製するとともに、2014 年に代替わりする新しい MTSAT(ひまわり)に対応した雲頂推定方法を開発することによって、過去約 20 年の雲頂高度を中心とする長期気候データベース(名称 CTOP2)を作製して、データの未来への延長を可能にする。具体的な研究計画は以下の通りである。

(1)過去の静止衛星利用方法の開発

日本や西太平洋を含む領域の静止衛星観測のうち、赤外 2 波長を用いる CTOP アルゴリズムが適用できるのは 1995 年 6 月以降である。CTOP は CloudSat の雲頂直接観測が利用できる 2005 年以降の MTSAT-1R と MTSAT-2 について作製されている。一方、それ以前の GMS-5 と GOES-9 については CloudSat 雲頂高度直接観測が利用できないので、当研究では静止衛星の交替期に連続して運用されている極軌道衛星 NOAA を利用する方法を試みる。まず、MTSAT-1R と極軌道衛星の同時観測を抽出し、回帰分析により両者の輝度温度の関係式を導く。次に交替前の静止衛星 GOES-9 と極軌道衛星について関係式を導く。これら 2 つの関係式を用いて、GOES-9 観測値を MTSAT-1R 観測値に較正する。同様にして GMS-5 観測値も較正し、計約 20 年におよぶデータセットを作製する。

(2) CALIPSO ライダーを用いた次世代 MTSAT のルックアップテーブル作製

これまで申請者らは CloudSat 衛星の雲レーダー観測をルックアップテーブルに用いていた。この観測は、比較的雲水・氷密度の大きい雲では精度の良い推定値をもたらしてくれたが、それが小さい雲に感度がないので、全体的に少し低めの雲頂推定となっており、また光学的にごく薄い雲を見逃したりする欠点があった。さらに、CloudSat は劣化の影響で現在昼間軌道のみの運用となっており、次世代 MTSAT については夜間を含むルックアップテーブルの作製に利用できない。そこで、この研究では運用の続いている CALIPSO 衛星のライダー観測 CALIOP を用いたテーブル作製を試みる。この観測は、CloudSat より雲を感度良く検出できるのだが、subvisible cirrus とよばれる熱帯圏界面付近に薄く広がる雲も検出してしまうという問題がある。この雲の生態は独特であり、それとしての興味はあるのだが、申請者を含め多くの研究者が求めている熱帯対流活動と直接に結びついたタイプの雲の雲頂とは区別したいことが多い。この区別を合理的に行うスキームを開発する必要がある。この方法が開発できれば、過去の衛星に対しても同じ方法を適用し、全期間にわたり、さらに精度のよい雲頂推定を提供することができる。

これらによって作製されたデータを生存圏データベースとして公開する予定である。

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2014年7月17日作成

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