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樹木を用いた重金属汚染土壌のファイトレメディエーション法の開発研究

更新日: 2015/04/16

氏名 原田英美子
共同研究者 矢崎一史
採択年 2008(平成20) 年度

人間の経済活動の結果として排出された廃棄物がもたらす水や土壌の汚染は、深刻な社会問題となっている。農地や農業用水の汚染は、農産物の汚染に容易に結 びつく。汚染された食糧を摂取したことにより生じた健康被害の代表的なものが、カドミウム汚染米を原因とするイタイイタイ病である。土壌汚染をいかに防ぐ か、また、すでに汚染された土壌をどのように浄化するかは、食の安全性と豊かな環境の保全を目指す循環型社会では極めて重要な課題である。これを克服する 技術として、近年、植物を用いた環境浄化法が注目を集めている。この方法はファイトレメディエーションと呼ばれ、植物が行う根からの養分吸収などの生命活 動を利用して、環境中の汚染物質を分解もしくは減少させるので、従来の方法に比べて環境に対する負荷が低いという利点がある。

カドミウム、鉛などの重金属は、人間を含む動物だけでなく、植物に対しても有害である。植物は土壌中の重金属から身を守るため、1) 根からの吸収を阻害する 2) 取り込んだ重金属を体内で解毒して蓄積する 3) 重金属を地上部から排出する、などの様々な機構を発達させている。このうち、2) の機構を発達させていると考えられる植物が、重金属蓄積性植物(ハイパーアキュムレータ)である。このような植物の探索研究は、ヨーロッパやオセアニアで は古くから盛んに行われている。しかし、日本では、このような植物種の同定や分布、蓄積する金属種などの研究は始まったばかりである。このような植物は、 汚染土壌から効率的に重金属を除くことができるため、ファイトレメディエーション法に有効と考えられる。

重金属汚染土壌にファイトレメディエーション法を適用する場合、木本植物は草本植物よりバイオマスが大きいため、土壌の重金属を効率的に吸収できるというメリットがある。ヤナギ (Salix sp.) は、重金属蓄積が報告されている樹木である。ヤナギは挿し木による増殖が容易で初期成長が早いことから、再生可能で持続的な収穫が可能なバイオマス資源と しても有望視されている。しかし、樹木の植物体内における金属の動態や、金属耐性や蓄積性、輸送をつかさどっている遺伝子の研究などは、現在のところ草本 植物ほど進んでいない。本研究では、ヤナギを用いて、樹木における金属の蓄積機構を解明し、土壌の浄化技術を開発する。

2008m04

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