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第319回生存圏シンポジウム
地球惑星科学の持続的発展を目指す教育の将来像

更新日: 2018/07/13

開催日時 2016(平成28)年7月31日(日)10:30 ~8月1日(月)15:30
開催場所 京都大学宇治キャンパス宇治おうばくプラザ セミナー室1・2
主催者 中村尚(東京大学先端科学技術研究センター)
申請代表者 中村尚(東京大学先端科学技術研究センター)
所内担当者 塩谷雅人(京都大学生存圏研究所大気圏環境情報分野)
関連ミッション ミッション1 環境診断・循環機能制御
ミッション3 宇宙生存環境
関連分野 地球惑星科学、天文学、地学。

概要

「地学」は21世紀を生きる市民にとって不可欠な教育内容を含む科目であるにも拘わらず、高校地学の履修率は他の理科科目に比べて低く先細りが懸念されているなかで、本研究集会では,初等・中等・高等教育における地学・地球惑星科学・天文学の教育・研究現場の現状を把握し、その問題点を明らかにするとともに、生存圏科学のような分野横断的な学際教育や防災知識をどう発展させるかについて、2日間延べ70名の参加者が多角的な議論を行った。

目的と具体的な内容

「若者の理科離れ」が言われて久しいが、その原因は授業内容が生徒の興味を十分惹かないことに加え、大学受験の勉強があるべき姿から離脱し、羅列的知識の暗記に流れてしまいがちな点にもある。人類の生存に必要な「生存圏」を直接・間接的の研究対象とする「地球惑星科学」の持続的発展を図るためには、まず小・中・高校にて「身近な事物から大自然の奥深さと美しさを実感し、その摂理を探求すること」、即ち「センス・オブ・ワンダー」の感性を育てる教育が重要である。一方、大学・大学院教育では、学問の学際化・多様化が進む中、生存圏に関わる「地球惑星科学」という21世紀の市民に不可欠な複合科学をどう教えるかの検討が必要である。近年の宇宙・地球観測技術の発展は目覚しく、宇宙の構造や地球の変動に関する新しい知見が次々と得られつつある。研究の大型化・学際化の中で、先端研究の推進には広範な社会からの理解と支援が不可欠であり、そのために有効なアウトリーチの在り方の検討も求められている。
本研究集会の目的は、日本学術会議地球惑星科学委員会や日本地球惑星科学連合(JpGU)教育問題検討委員会との連携の下、将来の高校理科教育に関する提言が間もなく学術会議から発表されることを踏まえ、地球惑星科学の学校教育が現在抱えている問題点を明らかにするほか、地球惑星科学研究のアウトリーチの方法について、ジオパーク、地学オリンピックなどを例として有効な方法を検討することにある。

以下の通り、当日は上記のテーマに関する17の講演に加え、特別セッションとして平成30年度に導入が計画されている科研費審査方法の改訂が、理科教育に与え得る影響についても講演があり,パネルディスカッションを実施した。

生存圏科学の発展や関連コミュニティの形成への貢献

2日間の議論の結果、人類の生存に必要な「生存圏」を直接・間接的の研究対象とする「地球惑星科学」の持続的発展を図るためには、まず小・中・高校にて「身近な事物から大自然の奥深さと美しさを実感し、その摂理を探求すること」、即ち「センス・オブ・ワンダー」の感性を育てる教育の重要性が再認識され、その実践例が紹介された。一方,大学・大学院教育では、学問の学際化・多様化が進む中、生存圏に関わる「地球惑星科学」という21世紀の市民に不可欠な複合科学をどう教えるかについて議論が行われた。特に、平成30年度に導入が計画されている科研費審査方法の改訂が、理科教育に与え得る影響について特別セッションが組まれ,関連するパネルディスカッションにおいて、対処法に関する様々な意見交換がなされた。また、研究の大型化・学際化の進む中、先端研究の推進に不可欠な社会からの理解と支援を得るために有効なアウトリーチの実践例として、地学オリンピックや自然科学博物館の活動が紹介された。さらに、3ヶ月余り前に発生した熊本・大分地震の被災地での巡検活動の報告が複数なされ、その中で自然科学博物館等の復旧に関わる問題点が浮き彫りとなるなど、日本学術会議など研究者コミュニティーが連携して取り組むべき課題も明らかとなった。

プログラム

2016年7月31日(日)

10:10 受付
10:30–10:35 開会挨拶
塩谷雅人(京大・生存圏研究所)
  セッション1:小中高校の地学・防災教育I
座長:畠山正恒(聖光学院)・宮嶋敏(埼玉県立熊谷高校)
10:35–10:55 畠山正恒(聖光学院中学・高等学校)
「地学教育・防災教育の授業実践から考える現状と課題」
10:55–11:15 宮嶋敏(埼玉県立熊谷高校)
「防災の観点で改訂し『埼玉から地学 地球惑星科学実習帳』」
11:15–11:45 田口康博(千葉県立銚子高校)
「JpGUの考える新「地学基礎」の概要紹介」
11:45–12:05 美澤綾子(静岡県立静岡高校)
「地学基礎で学ぶ防災 —生徒に好評だった教材の紹介—」
12:05–13:30 昼食・休憩(プラザ内のレストラン「きはだ」は営業)
  セッション2:小中高校の地学・防災教育II
座長:根本泰雄(桜美林大学)
13:30–13:50 川辺文久・小原俊(文部科学省)
「国語教材のなかの地学」
13:50–14:10 吉岡直人(深田地質研究所)
「地震学会主催の教員免許状更新プログラムについて」
14:10–14:40 富田晃彦(和歌山大学)
「教員養成学部での学生の意識と課題」
14:40–15:10 総合討論(小中高校の地学防災教育について)
15:10–15:30 休憩
  特別セッション:科研費審査システム改革2018の科学教育への影響について
座長:廣田勇(京大名誉教授)
15:30–15:45 中村尚(東大・先端科学技術研究センター)
「今回の科研費改訂の趣旨について」
15:45–16:10 根本泰雄(桜美林大学)
「科学研究費助成事業(科研費)改革に対する懸念 —peer review 退行の危機では?」
16:10–16:35 斎藤靖二(国立科学博物館名誉館員)
「自然科学系博物館学芸員の対応」
16:35–16:50 廣田勇(京大名誉教授)
「改革案の背景と問題提起」
16:50–17:30 パネル討論:廣田勇,中村尚,根本泰雄,斎藤靖二,塩谷雅人(以上,パネラー)

2016年8月1日(月)

09:30 受付
  セッション3:大学・大学院の地学・防災教育
座長:大久保修平(東大・地震研究所)
10:00–10:20 岡田誠(茨城大学・理学部)
「GSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point:国際標準模式層断面及び地点)の地学教育への応用」
10:20–10:40 小森次郎(帝京平成大学)
「福島県浜通り地域での地学/防災/資源に関する巡検」
10:40–11:00 角縁進(佐賀大学・教育学部)
「熊本地震と防災教育」
11:00–11:30 大倉敬宏(京大・火山研究センター)
「阿蘇火山研究センターにおける熊本地震の被害の現状と教育活動への影響」
11:30–12:00 平原和朗(京大・院・理)
「南海地震に関連した地学・防災教育」
12:00–13:00 昼食・休憩(生協食堂、及びプラザ内コンビニは営業)
  セッション4:地学・防災教育に関わるアウトリーチ
座長:竹本修三(京大名誉教授)、中村尚(東大・先端科学技術研究センター)
13:00–13:30 作花一志(京都情報大学院大学)
「京都千年天文街道と超新星・彗星の出現記録」
京都千年天文街道でめぐる天文と歴史の探訪ツアー(2016年9月~12月)
13:30–13:50 杉憲子(共立女子大)
「三重で開催される2016年国際地学オリンピック」
13:50–14:10 前田晴良(九大総博)・池上直樹(御船町恐竜博)・松田博貴(熊本大)・北村晃寿(静岡大)
「熊本・大分地震による地域博物館の被害と今後の課題」
14:10–14:30 竹本修三(京大名誉教授)
「地殻ひずみの観測に基づく日本の地震予知研究の現状」
14:30–15:00 福田洋一(京大院理)
「測地学と防災 —GGOS (Global Geodetic Observing System:全球統合測地観測システム)の紹介」
15:00–15:25 総合討論
15:25–15:30 まとめ
中村尚(東大・先端科学技術研究センター)
15:30 閉会

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2016年7月8日作成,2018年5月17日更新

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