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第50回定例オープンセミナー資料

更新日: 2015/08/07

開催日時 2007/02/21(水曜日)
題目 燃料電池における電極反応機構の解析
発表者 内本喜晴 (京都大学大学院人間・環境学研究科・助教授)

要旨

燃料電池は化学エネルギーから電気エネルギーへ直接変換できる高効率エネルギー変換デバイスとして注目されている。本講演では、固体高分子形燃料電池 (PEFC) および固体酸化物形燃料電池 (SOFC) の電極反応機構の解明および電極触媒の劣化機構の解析を行った例について紹介する。

PEFC 電極反応機構及び劣化機構解明

白金担持カーボン (Pt/C) 触媒の耐久性向上が、固体高分子形燃料電池 (PEFCs) の本格的実用化のために求められている。それには、触媒の劣化機構を解明することが必須である。そこで、Pt の電子構造と局所構造についての知見が得られるシンクロトロン放射光を用いた XAS 法により白金粒子径の効果及び Pt/C 触媒の劣化が加速的に進行する電位サイクル試験における Pt の劣化機構を明らかにした例について紹介する。

種々の大きさの白金ナノ粒子を炭素担体に担時し、透過形電子顕微鏡で白金粒径の観察を行った。白金の L 吸収端をシンクロトロン放射光施設で測定した結果、白金粒径が減少するにつれて、吸収端近傍のホワイトラインが増加することが明らかとなった。これは、ナ ノサイズ効果により、白金の電子空孔数が増加したことに対応する。さらに、LIII 吸収端と LII 吸収端の比較より 5d 電子空孔数を求めたところ、白金粒径が減少するにつれて、白金の 5d 電子空孔数が増加することを定量的に明らかとした。EXAFS 解析により、白金-白金結合距離を求めたところ、白金粒径が減少するにつれて、白金-白金結合距離が減少することがわかった。さらに、電位サイクル試験に より白金触媒の有効電極面積の低下が認められ、XAS 測定結果より、その機構は Pt 一次粒子の成長によると示唆され、オストワルド成長による Pt の溶解-再析出であると推察した。

SOFC 電極反応機構解明

SOFCのカソードとして用いられる混合導電性酸化物電極上での酸素還元反応機構を明らかにした。通常 SOFC の実用的な電極は多孔体として用いられるが、多孔質電極と電解質の界面は現象の解析上複雑すぎるため、薄膜電極を用いた。形状を規定した 3d 遷移金属ペロブスカイト型酸化物薄膜および貴金属電極薄膜は、PLD 法およびスパッタリング法により作製した。

作動条件下での SOFC 電極材料および電解質/電極界面の挙動を明らかにする、直接的な測定手法として、高温(~800 ℃)で雰囲気(酸素分圧など)を制御しつつ、電流を通電した状態において、in situ XAFS 測定を行うことが可能な装置を製作した。セリア系電解質上に作製した La0.6Sr0.4CoO3-δ 薄膜電極を用い、SOFC 作動条件下におけるその場 XAFS 測定を行った。その結果、La0.6Sr0.4CoO3-δ 薄膜電極における過電圧に伴う酸素ポテンシャル変化が、電極内部や電解質/電極界面ではなく、電極/気相界面において生じていること、すなわち La0.6Sr0.4CoO3-δ 薄膜電極におけるカソード反応が表面反応律速であることが明らかにした。

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