研究課題
ヒトの健康とエネルギー循環に資する竹の総合利用に関する研究
研究組織
代表者 | 椎葉究 (東京電機大学理工学研究科) |
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共同研究者 | 渡辺隆司 (京都大学生存圏研究所) 新井一斗 (東京電機大学理工学研究科) 新倉大貴 (東京電機大学理工学研究科) 前村美樹 (東京電機大学理工学研究科) 幾竹美奈子 (東京電機大学理工学研究科) 平木純 (JNC(株)研究開発本部) 西村裕志 (京都大学生存圏研究所) 曲琛 (京都大学生存圏研究所) |
関連ミッション |
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研究概要
追加関連ミッション: 新領域
本研究では、大量の繁茂が環境問題を引き起こしている孟宗竹に注目し、孟宗竹から健康に寄与する生理活性物質とバイオ燃料を同時に生産することにより、竹の伐採や集荷にかかるコストを吸収して竹害を軽減するとともに、温暖化問題やヒトの健康維持に寄与する物質変換を行うことを目的とする。
代表者らは、孟宗竹から高い抗酸化能をもち血中コレステロール濃度を抑制するオリゴ糖(以下、BOS と略)の分離法を見出すとともに、抽出した残滓をバイオエタノールに高効率で変換する方法を見出した(図 1)。しかしながら、それらの特性を有する BOS 中の成分の分子構造は解明されていない。本研究では、まず、オリゴ糖の構造を特定するとともに生理活性の検証を行う。
図 1 竹からオリゴ糖およびエタノールの生産プロセス
①竹から高温酵素処理により調製された成分の構造決定
竹に含まれているヘミセルロースには、β1,4 キシランに側鎖としてアラビノースが α1,3 結合して、そのアラビノースの C5 位にフェルラ酸が共有結合しているタイプと α1,4 グルカンに側鎖としてキシロースが α1,3 結合し、そのキシロースの C4 位にフェルラ酸が共有結合しているタイプの 2 種類があると考えられている。ただ、両種のヘミセルロースに含まれるフェルラ酸は、いずれも酸やアルカリによりフェルラ酸の部分は加水分解されて、解離する。よって、酸を用いないヘミセルロースの抽出方法として、高温圧力に供し細胞壁構造を緩和して、酵素処理することにより小麦フスマからヘミセルロース部分の加水分解物(フェルラ酸を含むオリゴ糖)として抽出した BOS から、SEC や HPLC により、活性成分(FOS-1 と略)を分離後、LCMS、MSn 分析、二次元 NMR 等以下の方法により分子構造を決定する。
②構造決定された FOS-1 の工業的調製による生理活性の検証
高温圧力処理後の BOS から、FOS-1 だけを調製する方法を検討する。方法として、溶媒分離や逆相またはイオンカラムクロマトグラフィーを用いて、調製・精製条件を検討する。調製がうまくいかない場合は、アフィニティーカラムの設計も検討する。ラボレベルでの調製方法を確立後、FOS-1 をパイロットプラント(図 2 JNC 株式会社 エタノール生産プラント)により工業的に調製した BOS から調製・精製する。それを試験用マウスに摂食させ、東京電機大学において生理効果を検証する。
図 2 JNC 株式会社 エタノール生産プラント
これまで効果が確認されているコレステロール上昇抑制作用と PCR-DGGE 法により腸内細菌への影響について検証し、腸内細菌菌叢と生理活性の相関性についての統計学的な検証も行う。また、それ以外の生理効果(免疫賦活活性など)についても検証する。なお、腸内細菌の菌叢解析を PCR-DGGE 法により行う。プライマーはユニバーサルプライマーの他ラクトバチルスの DNA ヌクレオチドを用い、増幅された 16rDNA の DGGE パターンから菌叢解析する。免疫賦活作用については、サイトカイン ELISA 測定法により試験を行い(Perez. et. al. Hum, Reprod. 21(4).880.2006.)、その効果を検証する。それらの結果を踏まえ、竹のバイオリファイナリーで得られた物質を工業的に製品化することを JNC(株)と共同で検討する。
この竹由来のオリゴ糖は、将来、食品、医薬品や化成品への利用が期待でき、構造・機能相関が解明されればバイオ燃料生産を含めたトータルプロセスの完成につながる。
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2014年7月15日作成